ロシア哲学における時間を超えた対話―フョードロフとカルサーヴィンの考え方

ロシア哲学における時間を超えた対話

はじめに

近年、ロシア哲学の特に死生観において重要な論争が注目されています。その中心に位置するのが、ニコライ・フョードロフ（1829–1903）とレフ・カルサーヴィン（1882–1952）という二人の思想家です。早稲田大学の福井祐生次席研究員の新たな研究は、彼らの思想を比較し、両者の相違点と類似点を浮き彫りにしています。

フョードロフとカルサーヴィンの思想

フョードロフは「共同事業の哲学」を構想し、人類全体の復活を目指しました。彼の思想は、ロシア・コスミズムと呼ばれる宇宙的な観点からも支持されています。一方、カルサーヴィンは、フョードロフの「死者の魔術的復活」という見解に対して厳しい批判を行い、「真の死を通じた真の生」という理念を打ち立てました。このように、両者の思想には共鳴する部分がある一方で、根本的な相違も存在します。

研究の背景

通常、フョードロフとカルサーヴィンは十分に研究されてこなかった背景には、彼らの位置づけがしばしば見過ごされてきたことがあります。特に、カルサーヴィンは地理的な理由から研究が限定的でしたが、本研究によって彼らに新たな光が当たることが期待されます。

研究の成果

福井研究員の研究は、特にカルサーヴィンの主著『人格について』（1929）の分析を通じて、フョードロフの思想の背後にある哲学を再評価しました。指摘された「死の神格化」という言葉がカルサーヴィンの著作にも用いられていることは、二人の思想が環を作っていることを示唆しています。また、フョードロフとカルサーヴィンの思想が「全」と「一」の動的均衡に結びついていることも明らかになりました。