オフィス賃貸市場の新たな潮流と出社回帰の影響
近年、オフィステナント対象のグローバル調査結果が発表され、オフィス賃貸市場における新たな動向が浮き彫りとなりました。同調査は、米国の不動産サービス会社であるクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドが行い、世界各国の主要テナントを対象に実施されました。調査によると、オフィス賃貸面積の減少傾向は徐々に緩やかになり、多くの企業がオフィス面積の拡大を計画していることがわかりました。
出社率の回復とオフィス需要の再燃
調査では、企業のオフィス面積が過去2年間で平均13%増加していることが確認され、実に8社に1社が入居面積の拡大を考えているといいます。特に注目すべきは、出社率が安定し、今後出社回帰の勢いが強まる中で、企業がオフィス投資に踏み切ることです。クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドのアジア太平洋地域責任者キャメロン・アーレンズ氏は、「市場サイクルの次の段階が見えてきている。多国籍企業が主要な賃貸市場で動き出す見込みがある」と指摘しています。
この出社回帰が進んでいる背景には、社員の生産性や企業文化の重要性が挙げられます。アンシュル・ジェイン氏によると、出社率の上昇とともに、企業は自社のオフィス環境に対する投資を強化せざるをえなくなると述べています。このような流れが、オフィス賃貸市場を活性化させていく可能性があります。
オフィス環境のサービス化
調査によれば、テナントの85%がビルオーナーによるサービスや設備の向上を望んでおり、46%はそのために高い利用料を払う意志があると回答しています。これに伴い、高品質なオフィスには賃料がプレミアムでつくことが多く、オフィスの付加価値が重要視される時代が到来しています。しかし約60%のテナントは、現在のオフィスが重要なコラボレーションや企業文化の構築に十分対応できていないと感じています。このギャップを埋めることで、より魅力的なオフィス環境を提供できるでしょう。
採用対象地の変化と人材獲得戦略
また、企業は各地から多様な人材を採用するために、CRE戦略を柔軟に変更しています。アメリカでは国内のどの都市でも採用するスタイルが主流となり、アジア太平洋の地域でも拠点のない国での採用が増加しています。技術系人材の需要が特に高く、アジア太平洋地域では、この傾向が顕著に表れています。
まとめ:新たなCRE戦略の必要性
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドが発表した調査結果は、CRE業界が現在、転換期にあることを示しています。コスト削減が依然として重要視される一方で、オフィスの存在価値は財務指標を超えたものとなっています。企業がはっきりとした成長戦略を描く中で、オフィスのデザインや使用方針も変わってきています。今後のオフィスのあり方は、従業員の働きやすさや企業文化の形成にどのように寄与するかが問われるでしょう。
出社率の回復と共に、オフィスでの働き方も変化する中、企業はどのようにして必要なスペースを確保し、その魅力を高めていくのかが非常に重要になってきます。今後の進展に注目です。