東京都世田谷区に位置する東京農業大学の新学生寮「青雲寮」が、この度完成しました。設計・施工を手掛けたのは住友林業株式会社で、純木造の3階建ては、国産材や同大学が保有する奥多摩演習林の木材が使用されています。新しい寮には、特に陸上競技部の学生が今春から入寮する予定で、住友林業による心身の健康や競技パフォーマンスを支える木の特性を活かした空間づくりの取り組みが注目されています。
心身の健康をサポートする木造寮
青雲寮では、木材が持つ心理的ストレスの緩和効果や、空気の調湿・抗菌作用を最大限に活かし、学生が快適に過ごせる環境を整えています。特に、長距離ブロックの陸上競技部は、70回にわたる箱根駅伝への出場経験を持ち、アスリートにとって快適な住環境が競技力に与える影響を考慮した設計です。
環境への配慮と木造建築の可能性
建物に使用された木材は、約300m³で、その7割が国産材。特に、奥多摩演習林で伐採された木材が使われており、学生たちは木材の生産から加工、利用の過程を身近に体験することができます。このような木造建築は、脱炭素化に貢献しているとされ、青雲寮においても316.874トンのCO₂を固定することが見込まれています。
木の効果を科学的に検証
住友林業の研究所は、木材と緑がもたらす心身への影響をさまざまな角度から分析しています。今後この寮で、床の硬さや光の入り方、温湿度、香り、心理的・生理的な状態を測定し、木造建築がもたらす効果を科学的に検証します。2026年にはこれらの結果が発表される予定で、既存のRC造の寮と比較し、木材が持つ特性の有用性を立証することが狙いです。
落成式と今後の展望
2月25日には、東京都やメディアなど約60名の関係者が参加する中、落成式が行われました。この式典では、住友林業が設計と施工を担当し、東京農業大学の江口文陽理事長から感謝状を授与され、同社の取り組みが高く評価されました。
「青雲寮」は今後、学生たちに心地よい学びの環境を提供しつつ、森林からのCO₂吸収量を増やし、持続可能な社会の実現に向けて重要な役割を果たすことが期待されています。住友林業としても、非住宅分野での木造化を進め、木の持つ魅力を最大限に活かした新たな商品やサービスの提供を目指すとしています。