AI活用に伴うソフトウェア品質の課題と業界の反応
グローバル企業の約3分の2が、今後1年以内に重大なソフトウェア障害に直面する可能性があるという調査結果が発表されました。これは、継続的なテストソリューションとソフトウェア品質工学のリーダー、トライセンティスによる「クオリティ・トランスフォーメーション・レポート2025」に基づいています。
調査の背景と方法
このレポートは、公共部門やエネルギー、製造、金融サービスなど多様な業界のCIO、CTO、エンジニアリング担当バイスプレジデント、DevOpsリーダーなど、2,700人以上を対象に行われました。調査からは、現代の経済においてAIの活用がますます重要視されている一方で、企業が求めるスピード、品質、コストのトレードオフにおける認識のズレが明らかになりました。
ソフトウェアデリバリーと品質の不均衡
調査によると、生成AIの導入が期待されるのは主にデリバリースピードの向上です。申し訳ないことに、高品質のソフトウェアを実現することに対する期待は非常に低く、グローバル全体で13%にとどまり、日本ではわずか7%となっています。一方、品質向上についてはほぼ無関心であったり、重要視されていない現実があります。
さらに、63%の回答者が完全にテストを行わずに新しいコードを出荷していると言います。リリースサイクルを早めるためのテスト省略が、その主な理由として挙げられています。この流れは、企業が短期間で成果を求めるあまり、品質への配慮をかえって後回しにしている状況を示しています。
経済的な影響
ソフトウェア品質の低下は厖大な経済的損失を引き起こしています。およそ42%の企業が、年に100万ドル以上の損失を抱えており、金融業界においてはその影響が顕著です。日本においても金融関連の企業の約半数が、年間で1.5億円から7.4億円の損失を見込んでいることが報告されています。この損失は、業務の効率性や顧客満足度に直結するため、企業にとっては深刻な問題です。
組織内の連携不足
また、ソフトウェア開発者と経営陣の間、及び開発部門と品質保証部門のコミュニケーション不足も、品質向上の足かせとなっています。調査によれば、日本でも33%がこの問題を指摘し、開発部門と品質保証部門間の連携不足が深刻です。この状況が品質の低下を招いていることを認識している企業は多いですが、解決策を講じられていないのが現状です。
期待されるAIの役割
興味深いことに、回答者の82%、すなわち、日本では89%が、AIエージェントを活用することで生産性を向上させられると考えています。特に、AIの導入によるデリバリースピードと品質の向上が期待されています。デリバリーサイクルのスピードを上げつつ、同時に品質も確保するための新たな手段として、AIが注目されています。
AIの活用が進む中、9割以上の回答者がAIエージェントがソフトウェアのデリバリーに影響を与える意思決定を支援できると確信しています。AIが品質とスピードのバランスを取るための道具となることが期待されています。
結論
トライセンティスのCEO、ケビン・トンプソンは、「高品質なソフトウェアの重要性が新たに浮き彫りになっている」と語り、今後は品質とスピードのバランスを取った包括的なテスト戦略の導入が必要であると強調しています。本調査によって明らかとなった2025年のソフトウェア開発のパラダイムシフトは、業界に新たなガイドラインを提供するものであり、企業はこれを機会にさらなる成長を目指すべきです。