新たなPFAS無害化技術の誕生
環境問題へのアプローチがますます重要視される中、ウシオ電機株式会社が開発した新しいPFAS(有機フッ素化合物)を無害化する技術が注目を集めています。特に、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)などの代表的な有害物質を対象に、触媒や添加物を一切使用せずに光の力だけで分解するという画期的な方法が確立されました。
PFASとは
PFASは、長年にわたって様々な産業で利用されてきた化学物質ですが、その多くは人体や環境に有害であることが判明しています。特に、PFASはその難分解性から環境中に長期間残留し、健康へのリスクを高める要因となってきました。これに対処するために、世界中で排出規制が強化される一方で、効果的な除去方法の確立が急務とされています。
従来の処理方法の限界
既存のPFAS処理技術としては、活性炭での吸着後に高温焼却する方法が一般的ですが、これには様々な問題を伴います。活性炭の輸送や焼却にかかるエネルギー消費、さらには焼却時に発生するCO2や温暖化係数の高いフッ素系ガスの大気放出が懸念されています。こうした背景から、より環境負荷の少ない方法が求められたのです。
ウシオの革新的技術
ウシオ電機は、創業以来培ってきた真空紫外線技術を駆使し、PFASを分解する新たな手法を開発しました。この技術は、波長172nmの紫外線を発するエキシマランプを用いて、光、OHラジカル、水和電子という3つの力を組み合わせてPFASを分解します。実験において、mg/Lという高濃度のPFOAやPFOSが一定時間内に99%も分解されることが確認されました。
主な特長
1.
常温常圧での処理が可能: 特別な条件を必要とせず、手軽に導入できます。
2.
燃料や触媒が不要: 光と電気エネルギーだけで分解するため、コストも大幅に削減。
3.
安全性の高い分解過程: 新たに毒性のあるフッ素化合物が生成されにくい安心設計。
4.
短鎖PFASの分解にも対応: 従来の技術では難しかった短鎖PFASの処理が可能です。
5.
最終物質の再利用が可能: 分解後のHFやF⁻は水酸化カルシウムで処理し、フッ化カルシウムとして固定化。これにより新たな用途への再利用が実現可能です。
未来への展望
ウシオ電機は、今後の実用化に向けてさらに研究と開発を進め、2025年度には実証実験を開始し、2027年には商業化を目指しています。未来のクリーンな環境を築くために、地球温暖化対策にも積極的に貢献していく方針です。
展示会情報
この技術は、2025年1月29日から31日に東京ビッグサイトで開催される「InterAqua 2025」にてパネル展示され、広く紹介される予定です。
ウシオ電機は、企業としての社会的責任を果たしながら、人々の幸福と地球環境保全の両立を図るために、引き続き光技術の革新に取り組んでいきます。