再春館製薬所のエネルギー革命
再春館製薬所が展開する「ドモホルンリンクル」化粧品の製造過程で生じる廃液を有効活用し、再利用するプロジェクトが大きな注目を集めています。このプロジェクトは、2025年12月に開催された「くまもとSDGsアワード2025」で入賞するなど、その成果が認められています。化粧品製造の過程で生まれる廃液をただ無駄にするのではなく、未来のエネルギーとして再生するという新しい試みに挑む姿勢が評価されています。
阿蘇の水資源と「人間も自然の一部」
本社が熊本県上益城郡に位置する再春館製薬所は、阿蘇の伏流水に恵まれた「水の都・熊本」を拠点に、漢方の考え方を大切にしてきました。同社の主力ブランド「ドモホルンリンクル」に含まれる「クリーム20」は、特に多くの油分や植物成分を含む製品ですが、製造過程で出る化粧品廃液はその特性ゆえに分解しづらいとされています。これに対し、同社は「人を美しくサポートする製品が、水を汚すわけにはいかない」という強い信念の下でプロジェクトを立ち上げました。
微生物の力を利用した技術革新
再春館製薬所とベンチャー企業のWATASUMIは、微生物燃料電池技術を駆使して、廃液をエネルギーに転換する取り組みを推進しています。このプロジェクトの核心には、廃液を「電気」と「メタンガス」の二つに変換する技術があります。具体的には、次の2つの技術が導入されています。
1. 超音波と物理的攪拌による前処理技術
廃液を微生物が分解しやすい状態にするため、超音波と物理的攪拌を組み合わせた独自の前処理技術を開発しました。これにより、通常の方法に比べて分解率を飛躍的に向上させることが可能となりました。
2. 微生物群集の最適化
本プロジェクトでは、酒造排水で培った微生物をベースに、化粧品廃液に最適な微生物群が新たに調整されています。この工夫により、廃液からのエネルギー抽出の効率が格段に向上しています。
今後の見通しと地域貢献
再春館製薬所の薬彩工園工園長である高野徳恵氏は、「私たちは排水を浄化するだけでなく、新たな価値を生み出したいと考えています。自然への恩返しとして、このプロジェクトは第一歩です。」と語ります。2032年の創業100周年に向けて、さらなる技術向上に努めることが約束されています。
現在、沖縄のマングローブ域から採取した菌種などの導入によって、廃液処理のスピードを向上させることを目指しています。未来には、廃液をゼロにし、そのエネルギーを自社内で利用する、「エネルギーの地産地消」を可能にするビジョンが描かれています。
持続可能な社会を目指して
再春館製薬所は、化粧品業界だけでなく、地域社会全体に対しても多角的にアプローチし、サステナビリティ活動を進めています。自然の資源を最大限に活用しながら、環境に配慮した製品づくりを続ける同社の動きは、これからのエコロジーとビジネスの新たな形を示しています。これにより熊本の自然環境を守りつつ、持続可能な社会の形成に大きく寄与することが期待されています。