日本企業における通信教育とeラーニングの利用実態
学校法人産業能率大学の総合研究所が発表した『通信教育およびeラーニングの活用実態調査』によると、2019年と比較してeラーニングを導入する企業が17.8ポイント増加していることが明らかになりました。179社からの回答を基にしたこの調査では、企業の教育手法や人材育成の取り組みについて詳細に分析されています。
調査の背景
近年、リモートワークが広がり、デジタル化やリスキリングが重要視される中、効果的な人材育成の手法を模索する企業が増加しています。この状況を踏まえ、通信教育やeラーニングの活用状況を調べることは、今後の人事・教育政策において非常に重要です。
eラーニングの普及
調査結果では、最も多くの企業が実施している教育手段は「eラーニング」で、実施率は75.4%に達しています。続いて「外部講師による集合研修」が70.9%、そして「社内講師による集合研修」が65.9%という結果になりました。この数値は、企業がオンラインでの学習環境を整える一方で、リアルな研修にも力を入れていることを示しています。
また、2019年と比較してeラーニングの導入企業が増えたのは、リモートワーク環境における教育のニーズが高まったことや、デジタル化の進展が影響していると考えられています。しかし、通信教育の実施率は20.5ポイント減少しており、これには時代の変化が大きく関与しているようです。
利用目的の多様化
通信教育とeラーニングの利用目的に関して、最も多くの回答が得られたのは「多くの従業員に、広く学ぶ機会を提供するため」となりました。特にeラーニングでは、74.8%の割合でこの目的が選ばれ、従業員の学びを支援する意義が強く訴求されていることがわかります。また、「自ら学ぶ風土を醸成するため」という目的も多くの企業が重視しているようです。
学習の効果と課題
次に、学習を通じた効果についての在籍企業からの回答を見てみましょう。通信教育やeラーニングを利用している企業は、学習したメンバーの満足度や知識の獲得には高い効果を感じている一方、実際の現場での行動変容や組織パフォーマンスの向上はあまり実感されていない状況が浮き彫りとなりました。
多くの企業が「学んだことを現場で実践している」と感じていないという結果が示すように、人材育成の取り組みが期待された成果に結びついていない傾向があります。これは、効果測定をしていない企業が多いことと無関係ではなく、今後の改善が求められる分野です。
人材育成に関する資本情報の開示状況
人材育成に関する人的資本情報の開示状況については、245社のうちわずか24.6%が開示を行っていることがわかりました。これには企業の規模や上場の有無が影響し、特に上場企業では約6割が開示を実施しています。
開示される内容は、主に研修時間や学習にかかる費用に集中しており、研修の成果についてはまだ十分に明らかにされていない状況です。企業は、どのように人材育成の効果を測定し、透明性を持って開示するかが今後の課題になるでしょう。
まとめ
この調査の結果は、企業の人材育成戦略が進化する中での重要な指針となるでしょう。eラーニングや通信教育の効果的な運用が求められる今、企業は従業員の成長を支えるために、実践的な学習環境の構築や評価方法の見直しを進める必要があります。今後の教育政策の発展に期待が寄せられています。