女性管理職の昇進が抱える課題と解決の道筋
近年、女性の管理職や役員登用の推進が求められています。しかし、実際の調査結果によれば、それを阻む様々な課題が浮き彫りとなっています。特に、一般社団法人『日本の人事部』が発表した『人事白書2025』では、全国の人事部門を対象に実施した調査から多くの実態が明らかになりました。ここでは、具体的な課題と改善策について考察します。
昇進に向けた主な課題
調査によれば、女性が管理職や役員に昇進する際の障害として、最も多く挙げられたのは「要件を満たす女性が少ない」という点です。これが課長相当職、部長相当職、役員それぞれにおいて共通の課題として浮上しています。また、「女性自身が目指していない」という意識もその一因とされています。これは、特に若手女性のキャリア形成において、目指すべきロールモデルが不足していることと深く関わっていると言えるでしょう。
興味深いのは、企業の規模が大きくなるにつれて、女性管理職登用における「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」が特に顕著になるという点です。これは、組織の文化や風土がより影響を及ぼすため、大企業においては特に意識的に解消していく必要があります。
各職位別に見た課題
課長相当職
課長相当職への昇進に関する課題の多くは、「女性自身が目指していない」(47.2%)、「要件を満たす女性が少ない」(45.2%)に集中しています。また、全社的な女性従業員の数が少ないこと(28.7%)や、ロールモデルの不在(26.1%)も影響しています。これらのことから、企業内での女性の登用を促進するためには、まずは周囲の支援体制を整えることが不可欠です。
部長相当職
部長相当職に目を向けると、最も多く挙げられたのが「要件を満たす女性が少ない」(53.0%)です。女性自身がその職位に向かって進まない理由が浮き彫りになりますが、部長級の役職においては、さらにロールモデルが不足していることが多く関与しています。多様な女性が活躍する場を設け、成功事例を周知することで、次世代の女性を励ます環境を整える必要があります。
役員
役員への昇進についても同様の傾向が見受けられます。「要件を満たす女性が少ない」と回答した企業の割合は55.7%にも達し、特に大企業ではこの課題が顕著です。役員に昇進する際の障壁には、経営層の関心の低さもあるとされます。経営層自体が多様性を重視する立場に立たない限り、実際の変革は難しいのです。
ロールモデルの重要性
職位によって浮かび上がる課題の違いは、ロールモデルの存在に起因していると考えられます。特に大企業では、階層が厚く、成功した女性が見える機会が少なくなるため、若い世代の女性にとっての目標が不明瞭になります。企業側は、そのような成功事例を広め、次代に繋げるための積極的な透明性の重要性を認識しなければなりません。
結論
『日本の人事部 人事白書2025』から明らかとなったこれらの課題を乗り越えるためには、企業自身がロールモデルの確保や、女性の意識を変えるための施策を実行する必要があります。また、経営層からのサポートが不可欠であることも無視できません。ダイバーシティを実現するためには、全員が意識を持つことが求められています。
調査結果を基にした改善のための具体的なステップが求められており、企業の今後の取り組みに期待が寄せられています。