泡の塗り広げメカニズムを解明した東京の研究成果

泡は、食品、洗剤、化粧品、消火剤など、様々な場面で利用されていますが、従来、泡の塗り広げに関する詳細なメカニズムは解明されていませんでした。このたび、東京都立大学大学院理学研究科の遠藤雅也さんや栗田玲教授を中心とした研究グループが、泡がどのように基板上に塗り広げられるのかを調べることで新しい知見を得ました。

研究の背景

泡は、私たちの日常生活で頻繁に目にする物質です。特に、油分や微粒子を包み込む性質から、さまざまな製品に広く使用されています。しかし、泡がどのようにして滑りやすくなるのか、または、どのように塗り広げられるのかについては未だ解明されていないことが多かったです。たとえば、プラスチックの容器を洗浄する際には、泡が滑ってしまい、十分に塗り広げることが難しいことがあります。そのような状況下でも、私たちは経験則に基づいて迅速に手を動かして泡を塗り広げるものの、背後にある物理的なメカニズムは知られていませんでした。

研究の詳細

研究グループは、泡を生成するために市販の泡ポンプを使用し、泡内の気泡の平均サイズが200μm、液体分率は約10％とされています。彼らは基板を動かし、固定したアクリル板に向かって泡を塗り広げる実験を行い、その際の泡の内部構造の変化を観察しました。特に、塗り広げられる際の泡内部における気泡の運動が重要な発見となりました。泡が滑る条件と塗り広げられる条件が異なることが明らかになり、これが有向パーコレーション理論と関連していることが示唆されました。

発見の意義

研究によると、泡の塗り広げの際には、内部の気泡が動き、それが周囲に伝播することが観察されました。興味深いことに、外部からの刺激により滑りとコーティングを切り替えることが可能であることも示されました。この結果は、細胞や赤血球などのソフトジャミング系の運動の理解にも寄与すると期待されます。

産業への応用

この研究成果は、今後の産業においても重要な意味を持つと考えられています。食品や洗剤、化粧品などのさまざまな製品において、泡の性質を理解し、効果的に塗り広げることが実現すれば、効率的なコーティングが可能になるでしょう。

さらに、研究グループは、泡の塗り広げミスを制御することで、コーティングしたい部分には泡を効果的に塗り広げ、不要な部分では滑らせるといった技術的な革新も視野に入れているようです。

結論

泡がどのようにして塗り広げられるかを理解することは、日常生活の中での泡の応用だけでなく、科学的な分野でも新たな発見へとつながります。今後の研究成果がどのように発展していくか、目が離せません。今回の研究は、学術振興会科学研究費補助金やJST次世代研究者挑戦的プログラムの支援を受けて行われ、2025年には『Physical Review Research』に発表予定です。