東京・文京学院大と髙島屋が創る新たな江戸小紋の未来

文京学院大学と髙島屋が描く江戸小紋の未来

江戸小紋の伝統を支えるべく、文京学院大学と株式会社髙島屋が新たなプロジェクトを始動しました。2025年9月22日、両者は「ヒト×AIの共生による地域産業活性化プロジェクト」についての産学包括連携協定を締結。これは、AI技術を活用して江戸小紋のさらなる継承と新たな商品開発を目指す取り組みです。

「江戸小紋」の現状

江戸小紋は、着物市場において独自の存在感を持つ伝統工芸ですが、現在その制作は厳しい状況に直面しています。特に「けれんもの」と称されるデザイン様式の新作がほとんど見られないのが実情です。これは、熟練した職人が減少し、図案の複雑さから新作を手掛ける余裕がないことが主な原因です。

伝統工芸の制作は、図案家や型紙彫師、染屋など多くの職人の分業によって成り立っていますが、熟練した図案家が圧倒的に不足しています。職人たちは現在の図案を再制作することに多くの時間を割かれており、新たな作品に挑戦できない状況が続いています。これに対抗するためには、AIを駆使した新たなアプローチが不可欠です。

AIの導入とその意義

文京学院大学の経営学部において、江戸小紋の古い作品を分析する研究が進められてきました。その結果、図案制作に関する知識を2022年に体系化。独自のアルゴリズムを開発し、職人の労力を大幅に軽減するAI生成プログラムを完成させました。このプログラムのおかげで、2024年5月には「スイーツ尽くし小紋」が商品化され、江戸小紋に新しい風が吹き込みました。

AIは単なる道具ではなく、職人の技を支える新しいパートナーとして位置づけています。これにより、複雑な「ランダム配置」の問題を解決し、新商品の開発が進むのです。さらに、2025年には新たなモチーフ点描化AIシステムが構築され、伝統工芸の技術はよりデータ駆動型のアプローチへと進化を遂げる見込みです。

髙島屋との協力による新展開

髙島屋もこのプロジェクトに大きな期待を寄せています。バイヤーである天沼亜沙子氏は、伝統的な手仕事と最新のAI技術を組み合わせることで、ユーザーに新たな価値を提供したいと語ります。新入社員やきもの販売の経験が少ないメンバーを積極的に参加させ、斬新な視点から「デザインのマンネリを打破する」ことを目指しています。

このプロジェクトは江戸小紋にとどまらず、新たなデザインや商品展開へも視野を広げるものです。大学の研究を社会に還元し、地域の産業活性化につなげることは何よりも重要です。