岡山大学の異分野基礎科学研究所に所属する研究チームが、藻類から高等植物への進化をつなぐ重要な手がかりを発見しました。今回の研究では、ゼニゴケ(学名:Marchantia polymorpha)をモデル生物とし、光合成において重要な役割を果たす光化学系I(PSI)–クロロフィルa/b結合タンパク質(LHCI)超複合体の単量体と二量体の構造を明らかにしました。
光化学系Iは、光エネルギーを利用してNADPHを生成するための重要な複合体です。過去には、陸上植物のPSIが単量体の構造のみしか解明されていなかったため、二量体の存在やその構造に関する知見は限られていました。研究チームは、岡山大学異分野基礎科学研究所国際構造生物学研究センターに備えられた高解像度のクライオ電子顕微鏡(Thermo Fisher Scientific Titan Krios G4)を用いて、PSI–LHCIの単量体と二量体をそれぞれ1.94Åと2.52Åという高い分解能で解析しました。
特に注目すべきは、PSI-LHCI単量体の構造が非常に高分解能で分析されたため、複合体内部の水分子の配置やエネルギー移動の経路が詳細に明らかになったことです。今回の研究によって、陸上植物由来のPSI-LHCI二量体構造が初めて明らかにされたほか、その構造はこれまで報告されている緑藻由来のPSI-LHCIとは異なる新しい形式で形成されていることが判明しました。
二量体形成に重要な役割を果たすPsaB、PsaG、PsaH、PsaMというサブユニットの特定も、研究の大きな成果です。研究チームは、主要な励起エネルギーの移動経路も特定でき、単量体と二量体に大きな違いがないことから、二量体が高密度化に寄与している可能性を示唆しています。この成果は、ゼニゴケにおけるPSI-LHCI超複合体の構造解明に留まらず、光合成の過程における進化の過程を理解する一助となります。
この研究成果は、2026年2月5日に英国の学術雑誌「Communications Biology」のオンライン版で発表されました。
研究のリーダーである蔡弼丞助教は、岡山大学に赴任する前はがんや微生物の研究を行っていましたが、光合成酵素の研究に現在取り組んでいます。彼は、「陸上植物のモデル生物であるゼニゴケを用いた光化学系I超複合体の構造解析を行うことで、光化学系Iの進化について貢献できたことを嬉しく思います」と述べています。
岡山大学の研究は、日本学術振興会の特別推進研究と地域中核・特色ある研究大学強化促進事業の支援を受けて行われました。これにより、岡山大学は地域と地球の未来を共創する研究の発展に貢献し、学術界における影響力をさらに強化することが期待されています。今後の研究活動に一層注目が集まることでしょう。