信頼性の高いAI開発へ向けたデータ品質基準の確立

2023年、人工知能（AI）やデータ駆動型システムの信頼性向上に向けた新しい国際規格、ISO/IEC 5259シリーズが発表されました。このシリーズは、AI開発におけるデータ品質の管理と評価に関する重要な基準を提供し、AIシステムの品質を確保するための手助けを行います。

データはAIの「燃料」

AIシステムは、データなしでは機能しません。データは、AIの開発や運用における「燃料」と言えます。そのため、データの品質がAIシステムの性能や安全性に直接影響を与えることは明らかです。しかし、従来のデータ品質管理に関する国際標準では、バイアスの排除やデータの多様性の確保といった要件を十分に評価できない問題がありました。ISO/IEC 5259シリーズは、これらの課題に取り組むために設計されています。

AIデータライフサイクルを通じた品質管理

この規格は、AIのデータライフサイクル全体を通じてデータの管理と評価を行います。データ収集から処理、利用、さらには廃棄に至るまで、各段階において品質を高めるための指針を提供します。このアプローチにより、安心・安全なAIシステムの社会実装が促進され、日本のAI産業における国際的な競争力強化が期待できます。

社会課題への貢献

信頼性の高いAIシステムの開発は、社会課題の解決にも寄与します。特に医療や金融、自動運転、公共インフラなどの重要な分野では、データ品質の欠陥が経済的損失や倫理的問題を引き起こす可能性があります。ISO/IEC 5259シリーズは、こうしたリスクを低減するためのリファレンスとして機能します。

規格発行の背景と経緯

この新しい規格は、国立研究開発法人産業技術総合研究所が国際標準化を主導して発表されました。産総研は、AIとデータに関する国際的な標準化を進めるために、以来、様々な国内外の専門家と協力し、規格化を推進してきました。特にISO/IEC JTC 1/SC 42の分科委員会での活動が重要な役割を果たしました。

議論と今後の展望

今後は、データ品質の可視化に関する第6部も発行予定で、データ品質管理のための新しい解析手法が提供されます。これにより、企業や社会全体でのAI利用がさらに進展することが期待されます。また、この規格は欧州のAI法（AI Act）など、様々な国際規格においても採用される予定であり、グローバルに注目を集めています。

このように、ISO/IEC 5259シリーズは、AIの安全性を確保し、質の高いデータをもとにしたAIシステムの開発を推進するための新たな基盤を築くことに貢献しています。今後の展開を注目していきたいところです。

詳細については、こちらのプレスリリースをご参照ください。