SAR基盤モデルの革新
2025-06-03 14:11:29

国土に特化したSAR基盤モデルのAIによる新たな可能性

国土に特化したSAR基盤モデルのAIによる新たな可能性



国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、人工衛星「だいち2号」(ALOS-2)のSARデータを駆使して、日本の国土に特化した新たな基盤モデルを構築しました。
この技術は、年々増加する自然災害の対処や資源管理において、特に重要な役割を果たすと期待されています。

SAR基盤モデルとは?


SAR(合成開口レーダー)技術は、昼夜や天候に左右されることなく高解像度の画像を取得する能力があります。これにより、森林の多い我が国の地形変化を把握するのに非常に有用です。しかし、SARデータの判読は専門知識が必要であり、そのためのAI技術導入が進んでいますが、処理のコストや労力が問題とされていました。

今回、産総研はJAXAと協力により、事前学習を基にした基盤モデルを開発しました。この基盤モデルは、土地利用・土地被覆データの均等化を図り、さまざまな土地の特徴を学習するために設計されています。これにより、専門的な知識を必要とせず、誰でもSARデータを利用できる環境が整うことが期待されます。

学習データの均等化


日本の国土は70%が森林に覆われており、無作為なデータ学習では森林に偏った結果が出ることが予想されます。この課題を解決するため、研究チームは森林、市街地、水域など各土地の特性を均等にカバーするよう学習データを選定しました。結果として30万枚以上の画像パッチから構成されるデータセットが整備され、この精緻なデータセットを用いてSAR基盤モデルが構築されました。

大規模な教師無し学習の活用


この基盤モデル構築には、大規模AIクラウド計算システム「ABCI」を活用し、教師無し学習法で消費するデータ量と計算能力を大幅に削減しています。特に、MixMAEという新しい手法を採用することで、モデルの表現能力をさらに向上させているのが特徴です。

これにより、学習にかかる時間とコストを厳しく管理しつつ、高い精度の土地利用・土地被覆推定が可能となりました。実際の推定結果では、従来自体基盤モデルを用いない場合と比較して10%以上の精度向上が見られるなど、顕著な成果を上げています。

今後の展望


今後、この基盤モデルを用いて、様々な現場での適用を進めていく計画です。災害監視や都市の変化把握など、幅広い分野で活用が見込まれます。また、専門知識を要する判読の過程をAIが支援し、情報がユーザーに直感的に届けられる未来が期待されます。

特に、言語と画像情報の融合により、SARデータの理解をより迅速かつ直感的に行える方法も模索中であり、今後の充実した結果の発表が待たれます。

まとめ


この産総研とJAXAの共同プロジェクトは、SARデータの普及を加速させる新たなステップとして、専門知識を必要としない利用の実現に向けた大きな一歩です。多くの機関や研究者がこの基盤モデルを利用することで、国土の理解や管理が進むことが強く期待されています。

本研究成果の詳細は、2025年6月に開催される「日本リモートセンシング学会第78回学術講演会」で発表される予定です。新たな技術による未来の国土管理にご期待ください。


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