糖尿病とサルコペニア
2025-05-27 18:08:59

高齢2型糖尿病患者のサルコペニア早期発見に貢献する歩行指標とは

研究概要



高齢化が進む現代社会において、2型糖尿病は患者数が増加し続けています。この疾患はサルコペニアのリスクを高めるだけでなく、身体機能の低下を引き起こし、糖尿病そのものを悪化させる負のスパイラルに陥ることが懸念されています。そんな中、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」)と香川大学医学部附属病院の共同研究チームが、高齢の2型糖尿病患者におけるサルコペニアの有無による歩行の違いを3次元動作解析を用いて明らかにしました。

サルコペニアとは



サルコペニアは、骨格筋の減少や筋力、身体機能の低下を指す言葉で、加齢や栄養不足、様々な疾患が要因となります。特に2型糖尿病患者においては、筋肉の代謝が低下しがちであり、サルコペニアに罹患するリスクが増加することが示唆されています。このため、高齢糖尿病患者のサルコペニアを早期に発見し、適切に介入することが重要です。

研究の目的



本研究では、3次元動作解析技術を駆使して、高齢の2型糖尿病患者の歩行中における関節運動を定量的に評価しました。特に、歩行速度や歩幅だけではなく、足関節(足首の関節)の運動範囲に着目することによって、サルコペニアの診断に有用な新たな指標を見出そうとしています。

結果



研究の結果、サルコペニアを有する高齢2型糖尿病患者は、歩行速度が低下し、歩幅も短くなることが明らかになりました。同時に、歩行中の足関節の運動範囲が著しく減少していることも確認されました。この動きの変化は、歩行速度の影響を除外しても顕著であり、サルコペニアの早期発見に貢献する可能性が示唆されています。

歩行指標の重要性



歩行速度や歩幅に加えて、足関節の運動範囲を評価することは、サルコペニアの検出にたいへん重要です。これにより、専門的な設備が無くても、簡単に日常生活の中でサルコペニアのチェックが可能になります。また、細かなデジタルバイオマーカーとしての役割も期待されています。

今後の展望



今後は、研究の成果を基にスマートフォンなどの手軽なデバイスから取得されたデータを利用し、関節の動きや歩行パターンを推定するシステムの開発も計画されています。このシステムにより、医療の現場や自宅で容易にサルコペニアを発見し、適切なケアができるように進められることが期待されています。これにより、多くの糖尿病患者が早期に対策を施すことができるようになるでしょう。

研究の背景



2型糖尿病の患者数は2050年には12億人を超えると予測されており、そのうち多くが高齢者になります。これに伴い、糖尿病とサルコペニアの関係はますます重要視されています。糖尿病患者の筋力低下を防ぐためにも、早期発見と介入が求められているのです。本研究を通じて、日常生活における歩行指標を用いることで、より多くの人々が健康で長生きできる社会の実現に寄与したいと考えています。

研究は、2025年5月27日付けで「Scientific Reports」に掲載される予定です。具体的な論文情報や研究者の詳細は、プレスリリースをご覧ください。


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