金融機関における生成AIの利用促進と収益向上への道筋
2025年2月25日、アルテアエンジニアリング株式会社は東京大学大学院工学系研究科の和泉潔教授を招き、金融機関における生成AIの活用に関するラウンドテーブルを開催しました。こちらのイベントでは、金融業界における生成AI導入の現状やその影響を探るため、実際のデータをもとにディスカッションが進められました。今回はその内容を詳しくレポートします。
イベントの概要
開催情報
- - イベント名: ラウンドテーブル「金融機関は生成AIで成果を生み出せているのか~収益向上のJourney~」
- - 日時: 2025年2月25日 13:30~14:30
- - 場所: アルテアエンジニアリング株式会社日本オフィス
- - 登壇者: 及川恵一朗(アルテアエンジニアリング)および和泉潔教授(東京大学)
金融業界の現状
このディスカッションの冒頭では、「今、金融業界が直面している現実」というテーマについて、最近行われた調査の結果に基づき議論が行われました。調査の結果は、金融業界の多くの企業が生成AIを十分に活用できていない実態を示しており、特に注目すべきポイントは以下の通りです。
調査結果の概要
1.
生成AIの利用状況: 金融業界で働く人の54%が生成AIを「全く利用していない」と回答。特に、トレーディング情報などのデータ分析に使用している人はわずか8%で、主に事務作業での活用が中心です。
2.
活用目的への理解: 一般社員の54%が生成AIの活用目的に「あまりイメージが湧いていない」と回答し、役職者の中でも1割未満が業務効率化の先を見据えた利用方法を選んでいます。
3.
ギャップの存在: 半数以上の一般社員が生成AIの活用による業務効率化が「全くできていない」と応えたのに対し、役職者は6割以上ができていると認識しており、これには大きなギャップが見られます。
4.
外部支援の必要性: 役職者と一般社員では外部専門家からの支援に対するニーズに違いがあり、役職者は精度向上のサポートを求める一方、一般社員は人材育成を重視しています。
業務効率化に向けた取り組み
及川氏は、金融機関の業務が複雑化していることが、生成AIの活用に対する障壁となっていると指摘しています。このような中、現場社員とのコミュニケーションを深め、生成AIが本来提供できる価値を理解し合うことが重要だと訴えました。また、金融機関特有のデータセキュリティの課題に取り組む必要性も強調されました。
和泉教授は、特に生成AIを用いた「AIエージェント」の開発が求められていると述べ、マーケット分析など、具体的な業務ワークフローに即した利用方法の必要性を強調しました。
収益化へ向けた次のステップ
生成AIの活用は、業務効率化だけでなく、収益化にも直接的に関わります。及川氏は、データの正確性や因果関係の整理が、今後の収益化のカギとなると考えています。ディスカッションの最後では、金融業界の多くが「ホップ」という初期段階に留まっていると結論付けられましたが、その先の「ステップ」や「ジャンプ」に向けた改善が求められています。
まとめ
今回のラウンドテーブルでは、金融機関における生成AIの活用の現状と、その未来について貴重な見解が交わされました。生成AIがもたらす変革の可能性は大きいものの、その活用には現実的な課題が多く残されていることも同時に明らかになりました。今後、金融業界が生成AIを効果的に活用し、収益向上へとつなげるためには、業務の理解とその先を見据えた戦略的な取り組みが欠かせません。