福岡市立西高宮小学校のリーダーシップ教育開始からの変化
福岡市立西高宮小学校では、2025年9月に米国での最先端リーダーシップ教育を基にした全26回の「思考習慣」授業が開始され、早くもその成果が見え始めている。対象は4年生の全クラス196人で、授業を通じて子どもたちの会話や行動に訪れた変化が注目されている。
この取り組みは、企業向け教育研修を行うラーナーズラーナーのCEOである黒川公晴氏が監修しており、現代の変化の激しい社会において子どもたちが必要とされる“リーダーシップ”を育むことを目的としている。特に、子どもたちが変化に柔軟に対応し、自分の意見を持ち、周囲と協力していく力を養うことに重きを置いたプログラムである。
背景にある社会的課題
急速な社会の変化と多様な価値観の中で、固定的な正解を求める教育方針では子どもたちの創造性や課題解決能力が育まれにくいという問題がある。教育現場からは、知識の理解やルールの遵守に偏りがちな課題に対する指導方法の改善が求められている。これに応える形で開発されたこのプログラムは、自ら考え、発言し、実行に移す力を育むことを目指している。
プログラムの目的と指導方針
このプログラムの目指すところは、「適応型リーダーシップ」の育成である。これは、リーダーシップとは集団の先頭に立つことではなく、変化に気づき、自ら問いを立て、的確な行動に移せる力であるという考え方に基づいている。日常生活の中で「考えることを当たり前」にする姿勢を育むことが重要であり、そのために西高宮小学校では“思考習慣”の授業が設けられた。
授業内容は、キャリア教育の一環として「総合的な学習の時間」に組み込まれており、ラーナーズラーナーと民間学童クレイバーキッズが共同で監修を行っている。定期的なミーティングを通じて教員と協力し、教育活動の質を高めている。
授業内容と児童の変化
授業の中で扱われた思考習慣は以下の5つである。
1. 「どんな気持ち? テーマについて考える」
2. 「自分が既に持っている知識とつなげて考える」
3. 「知っていることと知らないことを分ける」
4. 「自分事化する(問題意識を持つ)」
5. 「発見、気づき、疑問を言葉にする」
これまでの授業を経て、子どもたちは「知らないことは恥ずかしい」という観念から「知らないことは宝の原石」のような新しい感覚を持つようになった。授業に関した感想としては、
「会話が明るくなり、自分の考えを発信することに躊躇がなくなった」
「理科の授業で思考習慣を応用する児童が増えた」
「授業で出たキーワードをもとに家庭でも調べる姿が見られる」
「学級経営にも思考習慣がとても有効であると感じている」
という意見が寄せられ、教室の雰囲気が明るく変わりつつある。
リーダーシップ教育の未来に向けて
今後の授業では、「解決すべき問題点の特定」や「コミュニケーションの目標設定」など、より多角的な思考技法が扱われる予定である。この取り組みを通じて、子どもたちが未知の状況に立ち向かうことを楽しめるようになり、自らの力で未来を切り拓いていく“適応型リーダーシップ”を育てる土壌を共に育んでいきたいと考えている。
地域の教育現場から始まったこの期待のプロジェクトに注目が集まる中、今後の展開から目が離せない。