船上で生産されたグリーン水素を陸上供給
日本の商船三井が、革新的なゼロエミッション事業である「ウインドハンタープロジェクト」を通じて、世界初となる船上で生産されたグリーン水素の陸上供給を実現しました。このプロジェクトでは、実証ヨット「ウインズ丸」を利用し、洋上の風力からグリーン水素を生成し、それを東京都の中央防波堤エリアに供給することに成功しています。
グリーン水素の生産とその意義
2021年度から2023年度にかけて、商船三井は大村湾での実証実験を行い、ウインズ丸における水素生産、貯蔵及びその利用のサイクルを確立しました。特に注目すべきは、東京湾での活動において、洋上で生産した国産グリーン水素を陸上に供給する新たな試みです。これにより、脱炭素社会の実現に向けた大きな一歩が踏み出されました。
ウインズ丸は航行中に展開される水素生産プラントで、風力を利用して生産した水素を効率よく貯蔵します。この水素は、後に水素キャリアであるメチルシクロヘキサン(MCH)に変換され、水素ガスのままでは運搬が難しいエネルギーの管理を容易にしています。
東京湾での新たな挑戦
東京湾の海洋環境は大村湾と比べて荒れるため、商船三井は安全な航行を確保するために、いくつかの対策を講じました。これにはMCHタンクの改造や、発電機の増設が含まれています。その結果、十分な水素供給量が確保され、実際に中央防波堤エリアに電力供給を行う計画も進行中です。
特に、2025年度には東京湾でさらに多くの水素を生産し、約200リットルに相当するMCHを供給する計画が立てられています。これにより、地域社会への貢献も期待されます。
脱炭素社会に向けて
商船三井は、ウインドハンダープロジェクトを通じて、今後の水素バリューチェーン構築に向けた取り組みも進めています。2030年代には、大型実証船を建造し、商用化を目指すというビジョンも掲げています。また、2025年には大阪・関西万博の「未来の都市」パビリオンにて「ウインドハンター」の模型を展示し、さらなる技術の普及を図ります。
このように、商船三井のグリーン水素プロジェクトは、持続可能な社会の実現に向けた新たな道を切り開いています。未来のエネルギー供給の形を変えるこの取り組みが、全国的な脱炭素推進の一助となることでしょう。
このプロジェクトの進展には、東京都が主催する「東京ベイeSGプロジェクト」にも参加しており、最先端のテクノロジーを利用した持続可能な都市づくりにも貢献しています。このような試みは、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた重要なステップであり、私たちにとっても未来の環境を守るための挑戦です。