高島屋と文京学院大学が共に歩む伝統工芸継承プロジェクト
2025年9月22日、株式会社高島屋と文京学院大学は共同で「ヒト×AIの共生による地域産業活性化プロジェクト」を発足させることを発表しました。このプロジェクトは、伝統工芸である江戸小紋の継承を目指すもので、AI技術を活用することで地域産業の持続可能な発展を図ります。
プロジェクト発足の背景
高島屋は、1831年の創業以来、「人を信じ、人を愛し、人につくす」を企業理念に掲げ、地域社会や文化、芸術に対する支援活動を展開してきました。特に呉服に関しては、その普及と発展に努めてきました。高島屋が設立した「上品會」では、古き良き伝統を守りつつ、新しい呉服の可能性を探る展示会を開催し、全国の名匠と協力しながら伝統技術の伝承を行っています。これに対し、文京学院大学は経営学部において江戸小紋の図案制作理論を体系化し、新たなアルゴリズムの開発に成功しました。これらの成果を活かし、AIを利用した効率的な商品開発を目指しています。
AI技術の活用
文京学院大学のデザイン経営史研究ゼミでは、江戸小紋の古い作例を詳細に分析し、従来の制作過程では時間がかかっていたランダム配置の問題をAI技術により解決するプログラムを開発しました。このプログラムを使用することで、職人は膨大な時間を要していた図案制作の負担を大幅に軽減でき、効率的に新作江戸小紋の制作が可能となります。2024年5月には、初のAI生成による新作江戸小紋「スイーツ尽くし小紋」が登場予定です。
地域産業の未来を見据えて
近年、着物市場において「けれんもの」と呼ばれるデザインスタイルの新作が少なくなってきています。これは、制作の難易度が高いことや、熟練職人の減少が原因です。伝統工芸におけるAI活用は未だ広がりを見せておらず、分業体制が危機に瀕しています。このプロジェクトは、AIを「職人の仕事を奪うもの」とは捉えず、むしろ「職人を支えるもの」として位置づけています。
今後の展望
高島屋と文京学院大学は、このプロジェクトを通じて商品開発や店頭展開を進め、江戸小紋以外にも新たな応用を模索していく方針です。また、この取り組みを通じて、地域社会への還元や人材育成にも寄与し、産業全体の発展を図ることを目指しています。地域産業の活性化と伝統工芸の未来をキープし続けるために、今後もさまざまな取り組みが期待されます。これからの展開に注目が集まります。