「静かな退職」の実態と職場への影響
近年、「静かな退職」という言葉が働く人たちの間で注目を集めています。これは、退職や転職を考えずに、必要最低限の業務をこなす働き方を指し、仕事への熱意や意味を見出さなくなる状態です。アメリカのキャリアコーチ、ブライアン・クリーリーが提唱したこの概念は、今では日本でも若者を中心に広く認知されています。
静かな退職の認知度と実践者の増加
日本においての調査によれば、「静かな退職」を実践している人は2024年に微増し、実際には約2.8%の人がこの働き方を選択しています。特に25歳から29歳の若い世代や35歳以上の人々でその割合が増加しており、全体的に静かな退職を選ぶ人が今後さらに増える可能性を示唆しています。このような若手のトレンドは、企業にとっては逆風になる恐れがあります。ただし、現状では「静かな退職」の認知度は全体の約3割に留まっているため、経営者や役員の理解度を高める必要があります。
管理職の役割と静かな退職者との関係
管理職は、静かな退職者とその周囲の従業員を公平にマネジメントしようとする傾向が強いことが、調査から明らかになっています。77.9%の管理職が、静かな退職を実践している部下に対しても積極的に関わる姿勢を示しており、これが職場内でのチームワークや連帯感にどのように影響を与えるのか注目されます。管理職がこのような姿勢を持つことで、静かな退職者が孤立することなく、より良い職場環境を築く手助けになるかもしれません。
職場への影響と従業員の認識の乖離
興味深いことに、静かな退職を実践する人の約40%は、自身の働き方が職場に対して影響を与えないと考えています。しかし、管理職層は静かな退職が職場にネガティブな影響を与えると感じている場合が多く、実際には影響を把握できていない可能性があります。これは、静かな退職者が自分自身の行動が周囲にどのような影響を及ぼしているのかを客観的に見つめ直す必要があることを示しています。
収入・スキルへの不安
静かな退職を選んでいる従業員は、収入やスキルの停滞について多くの不安を抱えている一方で、職場での孤立については非常に少ない割合でしか感じていないことがわかりました。71%の静かな退職者は、退職後にもその働き方を続ける意向を持つと答えています。これは、静かな退職が必ずしもネガティブな意味で捉えられるものではないことを示唆しています。
今後の課題と対策
静かな退職が職場に与える影響を軽視せず、企業側が積極的に対応策を講じることが求められます。従業員とリーダーの信頼関係を高め、「働きがいのある会社」を作るためには、全ての従業員が自分の役割と意義を見出し、企業内で生き生きとしたキャリアを築くことが重要です。特に中間管理職は、静かな退職を実践している従業員のキャリア形成に寄与する必要があり、その実現に向けたサポート体制を整えることが求められます。静かな退職の増加は、職場の「働きがい」の低下を招く恐れがあり、この流れを断ち切るためには、企業側に対する感度を高め、個々の従業員の状況を把握することが重要とされています。
今後の調査や分析を通じて、静かな退職がもたらす真の影響を企業が理解し、適切な施策を講じることが、持続可能な職場環境の形成に向けての重要なステップとなるでしょう。