日本の企業における生成AI導入の現状とセキュリティ課題を探る
最近、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)と株式会社アイ・ティ・アール(ITR)が発表した『企業IT利活用動向調査2025』の結果が注目を集めています。この調査は国内1100社を対象に行われ、生成AIや情報セキュリティに関する現状と課題が鮮明に浮かび上がりました。
生成AIの利用状況
調査の結果、答えた企業の約45%が生成AIを導入していることがわかりました。特に、日常業務における活用が顕著で、 Emailや資料作成などの基本業務において80%以上がその効果を実感しています。この数字は、生成AIが確実に企業の業務フローの中で役立っていることを示しています。
全社的に利用が推奨されている企業が15.9%、特定部門での限定的な利用が29.1%です。また、一部のプロジェクトやチームで試験的に利用している企業も26.3%を占めており、今後の普及が見込まれています。
懸念されるリスク
とはいえ、生成AIの導入にはリスクも伴います。特に、社内の機密情報が漏洩する恐れや、AIが出力する情報の精度に対する懸念が高まっています。調査では、全体の59.9%が機密情報漏洩のリスクを危惧していると回答しました。
加えて、生成AIによって出力された誤情報を業務に使用する「ハルシネーション」に対する懸念も大きく、特定部門利用者からは59.1%がこのリスクに注意を払うべきだと述べています。これにより、企業は生成AIを利用する際に運用ルールの策定やエンドユーザー教育が必要不可欠です。
デジタルトランスフォーメーションの進行状況
調査結果の中で、企業のデジタルトランスフォーメーション進度に関するデータも興味深いものとなっています。いわゆる「内向きのDX」と「外向きのDX」に分けて分析され、業務のデジタル化は52.1%で成果を出しているものの、顧客に向けた新たなビジネス創出には遅れが見られます。特に、顧客体験のデジタル化が進んでいるものの、新たな製品やビジネスモデルの開発は遅れをとる傾向にあります。
テレワークの現状
最近の調査では、テレワークの活用状況についても触れられています。 hybrids勤務が主流となっているも、実際にはテレワーク制度が活用されていない企業も少なくありません。調査結果によると、全社で全面的にテレワークが行われている企業はわずか7.2%で、ほとんどの企業がオフィス勤務も並行しています。
ランサムウェアの脅威
さらに、国内企業の48%がランサムウェア感染の経験があることが明らかとなり、メールやネットワーク機器の脆弱性が主な侵入経路として挙げられています。企業の情報システムにさまざまな脅威が迫る中、正確なセキュリティ対策の強化が求められています。
プライバシーガバナンスの重要性
プライバシーガバナンスについても重要性が高まっており、37.9%の企業が責任者を任命していると回答しました。従業員と顧客のエンゲージメントを向上させるためには、組織全体でプライバシー問題に対する適切なリスク管理と取り組みが重要です。
これらの調査結果を踏まえ、ITRのシニア・アナリストである入谷光浩氏は、企業は生成AIを単なる導入から効果的に活用する段階に移行していることを指摘しています。今後、業務の効率化を実現するための活用方法とともに、セキュリティ対策への取り組みがますます重要視されるでしょう。特に、生成AIの利用が進む中で情報漏洩やハルシネーションなどのリスク管理は、企業の競争力に大きく影響を及ぼす要因となることが考えられます。今後の動向に引き続き注目していきたいところです。