概要
東京都日野市に位置する「高幡鹿島台ガーデン」。この住宅地は、建築家・宮脇檀(1936-1998)が手がけたものとして知られ、地域全体の計画から住宅設計、街並みのデザインに至るまで、彼の設計思想が注ぎ込まれています。現在、築約30年の住宅がstudio9Xにより再生プロジェクト「日野の家―宮脇檀住宅を住み継ぐ」として生まれ変わることとなり、2026年7月下旬に完成予定です。
本プロジェクトの主な目的は、ただ単に建築家が設計した住宅を保存するのではなく、次世代の住人が新しいライフスタイルに合わせて価値を見出せるように更新するという「住み継ぐ」ことです。近年、日本では人口減少や空き家問題が進行しており、既存の住宅の活用が求められる時代です。そのため、宮脇檀の思想を受け継ぎつつ、現代に合わせた住環境を整えることが重要だとされています。
プロジェクトの背景
「高幡鹿島台ガーデン」は1985年に設計されたもので、住宅だけでなく道路、広場なども含む整った住街区として名を馳せています。ここでは歩行者を優先する道路や、住民同士が自然に交流できるスペースが設けられ、住宅が単体ではなく街全体との関係の中で価値を持つことが重視されています。
現代の家族構成に合わせて30代の子育て世帯が住むための住宅へと改修されることが決定し、新たな住民のライフスタイルが反映される空間に生まれ変わるのです。
住み継ぐための工夫
studio9Xは、建物を全て刷新するのではなく、建築家の設計思想を尊重しつつ現代の暮らしに必要な機能を追加する「残す」と「更新する」のバランスを考慮しています。具体的には、設備や水回りの適切な更新を行いつつ、建物の個性的な要素や職人技を感じる部分はできる限り残すことに注力しました。
加えて、先代住居者の美術関係者としての価値観も考慮しながら、素材の色合いやインテリアを調整。新しい家族が心地よく過ごせる空間を整える計画が進行中です。
新たな選択肢「住み継ぐ」
本プロジェクトの最大のテーマである「住み継ぐ」は、特別な人だけが利用できる建物の概念を覆すケーススタディとなります。既存の住宅ストックを正しく理解し、その価値を認識した上で適切な更新を行うことで、誰でも安心して暮らし続けられる住宅となることが目標です。
この取り組みは、人口減少と空き家問題が進行する現代において、「建て替え」だけでは解決できない選択肢を社会に示す役割も果たします。この住宅が再び人々の生活の場として活用され、新たな価値が生まれることを期待しています。
最後に
studio9Xの理念には、古き良きものを大切にしつつ新しい価値を加えることで、社会全体に貢献するとの強い思いがあります。これからも地域の住環境を豊かにするための取り組みを続け、より多くの人々が安心して暮らせる住宅の実現を目指しています。 一棟の住宅をただ保存するのではなく、次なる世代へと「住み継ぐ」という新たなモデルを提供し続けるのです。