聴覚ガイドを活用したスプリント走指導法の革新とは?
スプリント走における走りのパフォーマンスを向上させるスタイルが、早稲田大学の研究グループによって新たに提案されました。具体的には、聴覚ガイドとしてのメトロノームを利用し、ランナーのピッチとストライドを調整する方法です。この研究は、2025年3月21日付で「PLOS One」誌に公開されました。
研究の背景
スプリント走において、競技レベルや選手の理解度に依存しない指導法が望まれてきました。これまでの研究では、聴覚ガイドが低速移動の際のランニングに与える影響については一定の知見がありましたが、ハイスピードのスプリント走の領域においては未だ不明瞭でした。聴覚ガイドのメトロノームにより、選手に非言語的なフィードバックを提供する利点があることが、ここでの研究の着眼点です。
研究の目的
本研究の目的は、聴覚ガイドを使用し、中学生を対象にスプリント走のパフォーマンスを測定・解析することです。具体的には流れるメトロノームのテンポを調整し、選手のピッチ、ストライド、走速度を観察します。その結果を基に、新たなコーチング方法を構築することにありました。
研究の実施内容
中学生の参加者に対し、2種類のメトロノームテンポ—遅い(90%)と速い(110%)—を設定しました。走ってもらう中で得られたデータから、ピッチとストライドの変動を観察しました。興味深い結果として、遅いテンポではピッチが減少する代わりにストライドが増加し、逆に速いテンポではピッチが増加する傾向が確認できました。
この結果により、スプリント走の速度はピッチとストライドのバランスによって決まるため、この二つの要素を意識的に操作することでトレーニングにつながる可能性が示唆されました。
研究結果の意義
聴覚ガイドの使用により、コーチングに新しいアプローチを作り出すことが期待されています。特に、メトロノームというシンプルなツールを通じて、幅広い年代の選手に効果があると言えるでしょう。走り方の細かい調整は、例えば陸上競技のみならず、健康やフィットネス分野にも展開できる可能性があるのです。
将来への展望
研究では、ピッチとストライドの調整が選手の走行動作に与える影響が明確になりましたが、同時に集中が他の要素に散漫になり、走行速度においてマイナスの影響を及ぼす可能性も見えてきました。これを改善するために、聴覚ガイドの設定をより最適化する実験が今後の課題として残されています。
研究者のコメント
本研究を実施した長谷伸之助氏は、「今回の研究により、聴覚ガイドがスプリント走に及ぼす特有の効果を見いだせたことが大きな成果です。この成果を基に、さらに多様な条件での検証を進め、陸上競技指導の発展に貢献する方法を確立したい」と語っています。
この画期的な研究が陸上競技にどのような影響を与えるのか、今後の展開に期待が高まります。スプリント走でのパフォーマンス向上を目指すすべての選手に、新たな道が開けることでしょう。