中小企業の事業承継:次世代の育成現状と課題に迫る
日本の中小企業が直面している課題のひとつとして、事業承継が挙げられます。超高齢化社会を背景に、中小企業経営者の高齢化が進んでおり、実際に多くの企業で後継者を育てる動きが鈍化しています。東京商工リサーチによると、中小企業経営者の70代以上は30%、60代も同様に30%を占めているとの調査があります。このような状況を受け、フォーバル GDXリサーチ研究所は934名の中小企業経営者を対象に、事業承継に向けた後継者育成の現状について調査を実施しました。
調査結果の概要
調査の結果、次期後継者が決まっている企業はわずか19%、さらには候補者が全くいない企業が55.9%にのぼりました。この数字は、事業承継において多くの企業が課題を抱えていることを示しています。
後継者の育成状況
後継者の育成に関する質問では、62.6%の企業が何らかの形で育成を行っていると回答した一方で、37.4%は育成をしていないと答えました。育成プログラムに参加している企業の中では、最も多くの経営者が「経営者との共同作業やプロジェクトへの参加」を育成手法として挙げています。このアプローチは、経営者からの直接指導や取引先との関係構築を含む実践的な経験を通じて、次世代への知識やスキルの移転を進めることができます。
課題と理由
ただし、後継者育成の課題としては「経営者の経験やノウハウの伝承」が最も多く(53.4%)、また「承継すべき情報の整理」(49.8%)が続く結果となりました。これは、目に見えない経営スキルや知識をいかにして後継者に伝えるかが大きな問題であることを示唆しています。
一方で、後継者の育成を行っていない理由として最も多かったのが「まだ育成には早いから」(52.6%)という主張です。このような認識は、一部の企業が自社の未来を悲観的に捉えていることを示しています。
今後の展望
中小企業が持続可能な成長を図るためには、後継者育成の仕組みを確立することが求められます。フォーバル GDXリサーチ研究所所長の平良学氏は、経営者が自社の理念やビジョンを明確にし、次世代にバトンを渡すための中長期戦略を考え実行することの重要性を強調しています。
さらに、経営者と後継者との実践的な共同作業や定期的な1on1の設定を組み込むことで、経験の共有を促進し、次世代のリーダーシップを育成する必要があると述べています。事業承継は一朝一夕には進まないため、時間をかけて取り組むことが肝心です。
また、将来的に廃業を考えている中小企業も多い中、経営の根本的な目的である「存続」を再考する機会が求められます。経営に関わるすべてのステークホルダーのためにも、後継者育成に取り組むことが必要です。
結論
中小企業における事業承継は、経営者の高齢化が進む中で、より一層の注目を浴びています。後継者の育成が進まない現状を踏まえ、企業は早めに行動することが求められています。廃業や売却の選択肢も視野に入れつつ、長期的に事業を存続させるための手立てを講じることが必要です。これからの中小企業が如何にして次世代を育み、強い経営基盤を築いていくかが成功の鍵となるでしょう。