飲食店の防災意識と対策:2025年の調査結果から見える課題
日本の飲食店をサポートする「飲食店ドットコム」を運営する株式会社シンクロ・フードが、飲食店経営者を対象に実施した防災に関するアンケート調査の結果を分析しました。本記事では、約68%の飲食店が自然災害に不安を抱え、53%が人的災害にも懸念を示していることを見ていきます。これらの結果を踏まえ、飲食店が直面する課題とその対策について考察します。
調査概要
調査対象
本調査は飲食店ドットコムの会員である飲食店の経営者や運営者を対象に、2025年8月6日から8月11日の期間で行われました。回答数は293件となっています。全体のうち、69.6%の回答者が1店舗を運営しており、業態は居酒屋やダイニングバーを中心に多岐にわたっています。特に東京の飲食店が51.9%を占めており、首都圏に焦点を当てた調査となっています。
自然災害への不安
調査結果から見えてきたのは、飲食店の約68%が自然災害の発生に対して「不安を感じている」ということです。具体的には、「非常に不安を感じている」と回答したのが18.8%、また「やや不安を感じている」が48.8%を占めています。一方で、あまり不安を感じないという回答者は30%にとどまりました。
多くの飲食店が抱える不安の内容はさまざまです。建物の老朽化や倒壊リスク、自然災害の脅威(地震や津波など)、営業継続が難しくなることへの懸念、従業員や顧客の安全確保などが挙げられます。実際に、古い建物での稼働を余儀なくされている店舗や、南海トラフ大地震などの発生が懸念される店舗が多いことがわかりました。
人的災害への不安
さらに驚くべきことに、飲食店の約53%が人的災害に対しても不安を感じているという結果が示されています。「非常に不安を感じている」という回答が13.3%、さらに「やや不安を感じている」が39.9%となっています。具体的には、火災やガス事故、食中毒やヒューマンエラー、さらには治安リスクなどが主な懸念事項です。
特に火災リスクが高い厨房業務においては、油火災の危険性やガス漏れからの火災が現実の脅威として認識されています。また、店舗の周辺環境における治安の悪化も多くの経営者にとって不安要因です。
防災対策の実施状況
調査では、約67%の飲食店が何らかの防災対策を講じているとの回答が得られました。具体的には、「十分に備えを行っている」と答えた割合は5.1%、そして「ある程度検討・備えをしている」が61.4%を占めます。しかし、33.4%は全く検討していないという結果もあり、依然として多くの店舗が防災の準備不足であることが明らかになっています。
防災対策を行う理由としては、物品の固定、備蓄品の確保、避難訓練、保険加入などが挙げられます。例えば、自動消火装置付きのコンロやガス漏れ警報機の設置などの具体的な対策が報告されています。一方で、対策をしていない理由としては、「何を準備すればよいかわからない」「人手不足による余裕がない」などが多く見受けられました。
行政への期待
防災対策についての支援としては、金銭的援助や情報提供、マニュアルの整備などが求められています。具体的には、災害発生後の金銭的サポートやリソースの提供、ガイドラインの作成など、経営者が安心して運営できるような体制の整備が求められています。
まとめ
2025年の調査結果からは、飲食店の経営者が自然災害と人的災害の両方に対して高い懸念を持っていることが明らかとなりました。しかし同時に、十分な対策が行われていない店舗が多数存在し、これらを解消するためには経営者自身だけでなく、行政からのサポートも不可欠であると言えます。持続可能で安心な飲食店を地域に作っていくためには、今後の取り組みが重要です。