液体ガリウムを用いた新たな酸素発生反応向けの超薄膜形成技術

液体ガリウムの新技術で酸素発生を促進

2025年7月19日、早稲田大学の研究チームが発表した革新的な技術が、次世代のエネルギー材料に新たな可能性をもたらします。それは、液体ガリウムを利用し、「ハイエントロピー酸化物（HEO）」の超薄膜を形成する手法です。これにより、酸素発生反応（OER）に関する自由エネルギー障壁が低下し、高い触媒活性を持つ電極が得られました。

ハイエントロピー酸化物の重要性

ハイエントロピー酸化物は、5種類以上の金属元素を均等に含むことで知られ、高い化学的安定性や優れた触媒性能を発揮します。これにより、触媒材料やエネルギーデバイスにおいて非常に重要な役割を果たすと期待されています。しかし、その合成は技術的な課題が数多く存在しました。

新しい超薄膜合成法

研究チームは、液体ガリウムの上に形成される酸化ガリウム層を利用して、具体的にどのようにHEO超薄膜を合成したのでしょうか。彼らはまず、酸化ガリウム層に金属イオンを取り込むことに成功しました。次に、熱処理によってこれらのイオンを酸化し、HEO超薄膜を形成します。この過程で、酸化ガリウム層が示す高い親和性がなければならない作用を果たしています。

歪みの利用による反応性向上

興味深いことに、得られたHEO超薄膜には微細な歪みが導入されており、これが酸素発生反応における触媒活性を一層向上させる要因となっています。液体ガリウムを利用したこの方法では、従来の材料と比較してもより高効率な酸素発生が可能になりました。

研究の波及効果と今後の展望

この研究成果は、酸素発生反応のほか、水の電気分解による効率的な水素製造にも寄与する可能性を秘めています。また、HEO超薄膜の汎用的な作製法が確立されたことで、電池やその他のエネルギーデバイス材料への応用も期待されます。

研究チームのコメント

研究グループの代表である早稲田大学の菅原教授は、液体ガリウムの酸化ガリウム層を基盤にした新手法が、様々な金属元素を使った材料開発における新しい可能性を示すものであると述べています。これはデバイス技術の進化に大きく貢献することが見込まれています。

この技術は、具体的な応用の道を開くだけでなく、今後の研究にも多くのインスピレーションを与えることでしょう。実際の実用化には、いくつかの課題が残されているものの、この新たな合成手法の持つポテンシャルは計り知れません。