法人会が示す最新の景況感、トランプ関税は企業に影響なし?
公益財団法人 全国法人会総連合(略称:全法連)は、6月期の景況感アンケートを実施し、全国の約70万社の中小企業からの反響を収集しました。調査は法人会アンケート調査システムを用いて行われ、1,932名の経営者が回答しました。この調査結果は、業況や人手不足対応についての現状を浮き彫りにしています。
アンケート結果の概要
景況感アンケートは、毎年6月と12月に実施されるもので、最近の結果を見てみると、全体の業績が「良い」との回答は減少傾向にあることがわかりました。具体的には、卸売業・小売業が前回比で7.7%減、宿泊業・飲食サービス業は5.8%の減少を示しました。全体で見ると業績が良いと答えた企業は3.6%減少し、今の経済情勢が企業に影響を及ぼしていることが明らかになりました。
さらに、連日報じられているトランプ関税については、約38%の企業が「大いに影響がある」または「多少は影響がある」と回答した一方で、同じく38%は「あまり影響がない」と考えていることが判明しました。この結果は、予想外の反響とも言え、今後の展開に注意が必要です。
影響を受ける業種と懸念
特に影響が懸念されるのは運輸業や製造業で、一部の業種ではトランプ関税の影響を感じている声が多く聞かれます。「今後は影響が出てくると思う」との声も13%にとどまり、現時点では影響が見えにくいという意見が多いようです。この状況を踏まえ、今後の動向は引き続き注視が必要です。
人手不足の現状と企業対応
人手不足も大きな課題として浮き彫りになっています。今回の調査では、54.9%の企業が「人手不足」と回答しており、これは前々回の55.0%、前回の55.1%とほぼ同水準を維持しています。企業は人材を定着させるために、労働条件や待遇の改善に加え、「1on1面談」による個々の従業員へのサポートを重視し始めています。
昨今の物価高は企業の人材戦略にも影響を与え続けており、初任給や賃金を引き上げる企業が多く見られます。しかし、従業員規模が大きくなるにつれて「好待遇を求めて退職する従業員」が増える傾向も見逃せません。一方で、「人件費の上昇を理由に価格転嫁しやすくなった」という意見も見受けられ、両者に挟まれた企業は困難な選択を強いられています。
専門家の見解
今回の調査結果に対する一橋大学大学院経営管理研究科の安田行宏教授は、「運輸業、建設業、宿泊業・飲食サービス業では人手不足への対応が求められている。製造業、卸売業・小売業では国内の販路・顧客開拓が重要な経営課題」と分析しています。業種によって異なる課題と戦略が必要とされているのも事実です。
今後、企業がどのようにこの状況を打開していくのか、引き続き注目していきたいところです。