中堅社員のキャリア志向調査結果から見る将来展望と懸念
調査の背景
近年の雇用環境や社会構造の変化に伴い、企業は労働者に対して新たな働き方やキャリア形成を促す必要があります。特に中堅社員層は重要な役割を担っており、そのキャリア志向を理解することは、企業の人材開発戦略にとって不可欠です。本調査は、社会人として5年以上の経験を持つが役職に就いていない800人を対象に行われました。この調査結果をもとに、中堅社員のキャリア意識について考察します。
調査結果の概要
調査結果を簡潔にまとめると、以下のようなポイントが浮かび上がりました:
1. ミドルキャリアの過半数が「キャリア志向なし」「未定」と回答。
2. 成長を実感している社員は「マネジメント・スペシャリスト志向」が高い傾向がある。
3. 離職意向がある社員の約60%が「キャリア志向がない」と回答。
4. 理想とする職場の雰囲気や文化がキャリア志向によって異なる。
1. ミドルキャリアのキャリア志向
調査によると、キャリアについての志向が定まらない社員が多く見受けられました。35.5%が「特にキャリアについての志向はない」とし、20.5%が「まだはっきりしておらず、今後決めていきたい」とのことです。対照的に、専門領域を極めたいと考えているスペシャリスト志向の社員は13.1%に過ぎず、マネジメント志向もわずか8%であり、半数以上がキャリアに対する具体的なプランを持っていないことが明らかになりました。
2. 年次別キャリア志向の変化
年次別に見ると、キャリア志向は社会人6年目と8年目において特に顕著な転換点を迎えることが分かりました。社会人6年目ではマネジメント志向が6.7%、スペシャリスト志向が14.3%に達し、以降は成長する傾向が見られませんでした。役職を求め追求する意欲をもたらすものの、年齢が進むにつれて「まだ決めていない」という未定層が増加する実態も見受けられました。
3. 成長実感とキャリア志向の関連性
成長を感じやすい環境で働く社員のキャリア志向は、明確である傾向が強いことが示されました。成長実感の高い層では、専門性を高めたい意思が6割を超えていましたが、成長を感じにくい社員はその逆で、約7割が志向が不明確と回答しています。このことから、成長機会の提供がキャリア志向を喚起する鍵となることが示唆されます。
4. 勤続意向とキャリア志向の関係
現在の会社に留まる意向が強い社員は、マネジメントやスペシャリストとして働く意向も高く、約3割がこの志向を持っていると回答しました。一方、離職を考える社員の多くはキャリア志向が不明確であり、特に「キャリアに対する具体的な志向がない」との回答が40.8%に上りました。このことから、会社へのエンゲージメントを高める施策が必要です。
5. 理想とする職場文化
キャリア志向により、理想の職場文化も異なることが分かりました。マネジメント志向者はチームワークを重視し、スペシャリスト志向者はパフォーマンスを求める傾向が見られました。また、メンバー志向者は、切磋琢磨を好まないという特徴もあり、独立志向の社員は自己主導的な文化を望むことが示されました。
結論
この調査から、中堅社員のキャリア志向は多面的であることが明らかになりました。特に、成長を感じられる環境を整えることがキャリアに対する前向きな姿勢を持つことへ繋がるため、企業はこの点に留意するべきです。今後のキャリア設計において、個々の志向や不安を理解し、適切な環境を提供することが求められます。企業は、中堅社員の成長を促す体制を整え、彼らが主体的にキャリアを切り拓くことを支援する必要があるでしょう。
最後に、ALL DIFFERENT株式会社の調査が示す興味深いデータは、今後の人材戦略策定において有用な指針となるでしょう。社会における働き方が進化する中で、中堅社員をサポートするための新たな施策の導入が期待されます。