住友金属鉱山、フィリピンのニッケル採掘事業に関する要請
住友金属鉱山株式会社が操業するフィリピン・パラワン州のニッケル採掘事業が、国際社会から注目されています。2025年4月14日、39カ国の86市民団体が住友金属鉱山に対し、地域コミュニティへの影響を軽減する具体的かつ透明性のある対策が講じられるまで、ニッケル製錬事業を停止するよう求めました。この要請は特にコーラルベイニッケル社(CBNC)およびリオツバニッケル鉱山社(RTNMC)に焦点を当てています。
ニッケル需要と環境への影響
近年、脱炭素化の流れの中でニッケルの需要が急増していますが、この採掘事業は地域の環境や住民生活に重大な影響を及ぼしています。特にリオツバニッケル鉱山から流れ出すトグポン川では、高濃度の六価クロムが常時検出され、日本の環境基準をはるかに超えています。専門家によると、2024年の雨季には六価クロムの濃度が過去最高値を記録し、その影響で地域住民は健康被害のリスクにさらされています。六価クロムは発がん性があり、皮膚炎を引き起こすなどの悪影響があります。
市民団体の強い要請
環境法律支援センター(ELAC)、FoEフィリピン、アジア大平洋資料センター(PARC)、FoE Japanの呼びかけによって集まった声は、住友金属鉱山が10年以上にわたり実効性のある水質汚染対策を講じてこなかったことを指摘しています。これまでの調査によって、ニッケルの採掘が長期的に地域の水質を著しく悪化させ、周辺住民の生活にも深刻な影響を与えていることが示されています。
企業の責任と透明性
住友金属鉱山のニッケル製錬事業は、グローバルなEV市場に供給されており、テスラやトヨタ自動車といった主要企業のバッテリー材料にも使われています。しかし、国際的なビジネスと人権への指導原則に従って、企業は環境への影響を最小限に抑え、地域社会の権利を尊重する責任があります。この点において、住友金属鉱山は地域コミュニティの声に耳を傾け、透明性のある環境対策を実施することが求められています。
持続可能性への転換
田中滋さん(PARC事務局長)は「気候危機を解決するための真剣な取り組みがなければ、地域コミュニティがその代償を払う必要はない」と強調しています。また、レオン・ドゥルセさん(FoEフィリピン)は、この問題は「不公正なエネルギー移行を示す明らかな例」であり、企業の利益が地域住民の権利を侵害していると指摘します。
環境と地域住民の未来
FoE Japanの波多江秀枝さんは、「地域コミュニティの生活が脅かされることがあってはならない」と述べ、住友金属鉱山に効果的な水質汚染対策を策定し、実施するまでニッケル事業を停止するよう求めています。環境に配慮した持続可能な開発が求められる今、企業はより社会的責任を果たし、環境保護と地域権の尊重に向けた努力が必要です。
この要請に応じる形で住友金属鉱山が行動を起こさなければ、フィリピンの多くの地域住民が影響を受け続けることは確実です。地域の健康、未来、そして生態系を守るため、今後の動きに注目が集まります。
詳細は要請書をご覧ください。