日本企業のコンプライアンス成熟度についての調査
最近、米国オレゴン州を拠点とするNAVEXが発表したレポート「The State of Risk & Compliance in Japan」では、日本企業のコンプライアンス体制の現状に関する重要なデータが示されました。この調査は2025年4月23日から5月29日の間に行われ、米国、英国、フランス、ドイツ、日本、その他の国々から999名のビジネスプロフェッショナルを対象にしたものです。
日本のコンプライアンス成熟度は高まる
調査データによれば、日本企業の49%が自社のリスクおよびコンプライアンスプログラムを「管理段階」または「最適化段階」と評価しており、これはガバナンス・コンプライアンスの最高成熟度基準において堅実な歩みを示しています。米国の56%にはわずかに及びませんが、日本においてもコンプライアンス体制が確実に構築されつつあることが浮かび上がります。
内部通報文化の浸透が課題
しかし日本企業は、ホットラインの設置状況に関しては依然として課題があります。内部通報ホットラインを設けている企業は47%に過ぎず、これは米国や主要6か国の平均に比べて低い数値です。さらに、匿名での通報を可能にする仕組みが整っていないため、従業員が自らの声を上げにくい現実があるようです。調査によると、過去3年間にコンプライアンス問題に関連するネガティブな報道を受けたとした日本企業の回答者は20%に達し、これは他国を上回る割合となっています。
報復禁止ポリシーの導入状況
次に報復禁止ポリシーに目を向けると、日本で明文化されている企業はわずか24%にとどまります。これは米国の61%や主要6か国平均の49%と比較すると、非常に低い数字です。このことは、従業員が安心して懸念を報告できる職場環境を整えるための取り組みが不十分であることを示唆していると言えます。たとえホットラインが存在しても、報復への懸念から通報をためらうケースが多いため、会社としての対策が求められます。
コンプライアンスの主要課題
日本国内では、プライバシーやサイバーセキュリティに関する違反が多く見られます。データ保護が企業の信頼性を左右する重要な要素であり、近年のサイバー攻撃の増加に伴い、企業が抱えるデジタルリスクも高まっています。そのため、情報セキュリティや個人データを守るためのガバナンスを強化する取り組みは、今や最重要のコンプライアンス優先課題となっています。
AIの活用とその影響
注目すべき点は、日本のコンプライアンス部門の38%がAIの導入に関する意思決定に関与しているというデータです。これは主要6か国や米国の割合を上回っており、日本企業がリスクやコンプライアンスプログラムにAIを効果的に統合しようとしている姿勢が伺えます。AIガバナンスは、リスクやコンプライアンスの重要な要素であると認識されています。
NAVEXの見解
NAVEXのCEOであるアンドリュー・ベイツ氏は、最近の日本の内部通報者保護法の進展が倫理とコンプライアンスの文化に変革をもたらしているとコメントしています。成熟度は安心できるものの、基盤となるホットラインや報復禁止ポリシーの欠如は、依然として改善点があることを示しています。
結論
この調査結果は、日本企業がコンプライアンス体制の整備に積極的に取り組んでいるものの、内部通報文化の深化とともに、従業員が自由に懸念を表明できる環境を作ることが求められていることを示しています。一方で、AI活用の進展もあり、今後のリスクとコンプライアンス管理の進化が期待されています。