インクルーシブな未来へ向けた一歩
東京国立博物館では、地域に根ざした文化の保存と発信を目指し、「東洋館インクルーシブ・プロジェクト」を2023年度から開始しました。このプロジェクトは、サステナブルな文化施設として、より多くの人々が楽しめる博物館を実現するための取り組みです。特に、視覚障害を持つ方々に向けた具体的な施策が盛り込まれており、ミカンベイビー合同会社が中心となり推進しています。
プロジェクトの背景
東京国立博物館は、アジアの文化芸術を中心に展示し、その保全と活用を通じて広く啓発活動を行っています。しかし、従来の展示方法ではすべての人々にアクセス可能な博物館とは言えず、そのための変革が求められていました。情報や体験が偏らないよう、多様な背景を持つ個人が共に意見を出し合うことが重要であり、そこから生まれる「共創」がこのプロジェクトの中心にあるのです。
具体的な取り組み
「東洋館インクルーシブ・プロジェクト」では、3つの重要な施策を展開します。
1.
ハンズオン体験の提供: 来館者が触覚を通じて作品を理解できるよう、様々な素材を用いたハンズオン体験を導入します。
2.
音声ガイドの充実: 展示物の詳細を音声で説明するガイドが用意され、視覚障害のある方々の体験が豊かになるよう配慮されています。
3.
対話の推奨: 館内では“おしゃべりフリー”の環境を設け、鑑賞者同士が自由に意見を交わせる雰囲気を醸成します。これにより、視覚障害を持つ方が鑑賞に集中できることを確保し、多様なコミュニケーションの場を提供します。
SFC-IFCの役割
このプロジェクトは、福祉コミュニティ型ラボ「SFC-IFC」の協力を得て進められています。SFC-IFCは、年齢や障害にかかわらず、多様なメンバーが集まり、共に活動を行う場です。ここで得た知見を基に、視覚障害者が真に必要とする要素を抽出し、それに基づく改善案を提供しています。これにより、実際の経験や課題を反映したより実践的なプログラムが生まれています。
プロジェクトの展望
最初の大規模な試みとして、2025年に開催される「博物館でアジアの旅」展が挙げられます。このイベントでは、視覚障害者向けの特別プログラムが用意され、実際に新しい施策を体験できる場となります。この展示会は、単なる文化的経験を提供するだけでなく、「誰もが訪問できる博物館」という理想に向けた重要なステップを示すものです。
最後に
東京国立博物館の「東洋館インクルーシブ・プロジェクト」は、文化的なアクセスの向上に向けた試みの一環であり、今後ますますの発展が期待されています。また、ミカンベイビー合同会社と協力することで、視覚障害者のニーズに寄り添った取り組みが続けられることは、博物館にとっても大きな意義を持ちます。
このプロジェクトに関する詳細やイベントの最新情報については、ぜひ東京国立博物館の公式サイトを訪れてみてください。参加者全員が楽しめるインクルーシブな文化体験が、今後も広がっていくことを心から願っています。