歩行調整能力評価法
2025-09-29 14:26:46

高齢者の歩行調整能力を簡便に評価する新しい方法の提案

高齢者の歩行調整能力を簡易に測定する新手法



高齢者が日常生活で安全に移動するためには、周囲の状況を正しく把握し、それに合わせて行動を調整する予期的歩行調整能力が求められます。しかし、加齢によってこの能力が低下することで転倒リスクが高まります。これを受けて、東京都立大学の研究チームは、国際的に広く用いられているTimed Up and Goテスト(TUG)の手法を改良し、高齢者の歩行調整能力を簡便に評価できる方法を開発しました。

研究の概要



TUGテストは、椅子から立ち上がり、3メートル先に設置された目標を迂回して戻るというシンプルな課題です。このテストは、歩行中の視覚的判断、方向転換、座る動作を含む多様な動作を測定するため、歩行調整能力の評価に適しているとされています。

研究チームは、既存のTUGに障害物を加えることで、新たな課題「障害物TUG」を開発しました。この課題では、参加者が椅子から立ち上がり、配置された障害物を回避して椅子まで戻ることを求められます。これにより、どの程度の隙間を通過するか、または迂回するかを選ぶことで、予期的な歩行調整の能力が評価されます。

主な結果



38名の高齢者と24名の若年層を対象に行われた実験では、高齢者は障害物間の隙間が広くても、素早く通過するよりも迂回することを選ぶ傾向が強いことが判明しました。これは、効率性よりも行動の変化量を抑えることを優先していることを示しています。この結果は、高齢者特有の歩行パターン—すなわち、歩幅を狭めることで動作の変動を抑えようとするものであると考えられます。

研究の重要性と今後の展望



本研究から得られた知見は、高齢者の転倒リスクを評価する上での新たな手法を提供するものであり、医療現場での応用が期待されます。特に、障害物TUGを利用した新たな評価方法が、高齢者の予期的歩行調整能力を簡便かつ直接的に測定する手段として注目されています。この研究は、従来の評価手法では捉えきれない歩行調整の特性を明らかにし、さらなる転倒予防策の開発につながる可能性があります。

今後の研究では、虚弱高齢者や脳卒中患者を対象とした応用も視野に入れ、障害物TUGを基にした評価法の幅を広げることが重要です。これにより、より高い安全性の確保と、日常生活における自立支援が実現されることが期待されます。


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