海水からカリウム回収
2025-06-23 14:21:24

海水からカリウム資源を効率的に回収する新技術の開発

海水からカリウム資源を効率的に回収する新技術の開発



日本では農業の生産に欠かせない三大栄養素、窒素、リン、カリウムのうち、特にカリウムのほとんどを輸入に頼っています。このため、地政学的リスクや農作物の価格高騰などの懸念がつきまといます。そんな中、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)では、海水からカリウムを効率的に回収する新しい技術を開発しました。この技術により、カリウム資源を国内で安定的に生産できる日が待たれるかもしれません。

技術の革新



この新技術は、プルシアンブルー型錯体を塗布した電極を用いることによって、海水から選択的にカリウムイオンを吸着・脱離させることが可能です。これに、電気化学的な制御を加え、ナトリウムイオンを99%以上排除することに成功しました。その結果、カリウムイオンの濃縮が実現したのです。

具体的には、模擬海水中のカリウムイオンとナトリウムイオンの比率を調整し、一連の処理を行った結果、カリウムイオンがナトリウムイオンに比べ約2000倍高濃度で得られるという驚くべき成果が得られました。

国内需要への寄与



日本は四方を海に囲まれた島国であり、海水には大量のカリウムが含まれていますが、その濃度は極めて低いため、これまで有効利用されていませんでした。既存の手法として、食塩の製造時に発生する苦汁からカリウムを回収する方法がありますが、これも副生成物であるため生産に限界があります。しかし今回の技術は、海水から直接カリウムを回収することが可能となるため、国内需要を満たす新たな道が開かれたのです。

環境への配慮と持続可能な農業



さらに、この技術は、地球環境にも配慮した持続可能な農業の実現を目指しています。地産地消を促進することで、国内の農業生産者に安定した原料を提供し、肥料の国産化を進めることが期待されます。これは、日本政府が掲げる食料安全保障の強化政策にも対応したものであり、今後の実用化が待たれるところです。

今後の展望



今後は、この技術を活かし、回収したカリウムを液肥などに利用可能な濃度まで濃縮する方法や、肥料の固体化を低コストで実現する技術の開発が進められます。さらに、実海水での検討や処理工程の簡略化も進められる予定です。

この新しい技術は、食糧生産の安定化や農業の持続可能性向上に寄与し、私たちの生活にも大きな影響を与えることでしょう。これからの展開に目が離せません。

論文情報


  • - 掲載誌:Water Research
  • - 論文タイトル:Adsorption selectivity of nickel hexacyanoferrate foam electrodes and influencing factors: extraction of a 98% potassium fraction solution from pseudo-seawater
  • - 著者:Takeo Tomiyama, Masakuni Yamaguchi, Yuta Shudo, Tohru Kawamoto, Hisashi Tanaka
  • - DOI:10.1016/j.watres.2025.123796


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