日立と三菱ケミカルが推進する化学プラントのDX
日立製作所と三菱ケミカルは、2025年12月から三菱ケミカルの四日市東海事業所において、設備管理業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速する共同検証を開始しました。新たに導入されるのは、デジタルサービス「HMAX Industry」で提供されるAIエージェントです。このAIエージェントは、プラントの設備故障診断を支援し、熟練の設備管理技術者と同様の精度でトラブルシューティングを行うことを目指しています。
プロジェクトの全体像
本プロジェクトでは、三菱ケミカルが保有する様々な現場データと、日立の高度なAI技術を結集することにより、プラントのスマート化を図ります。AIエージェントは、生産設備が故障した際に、その原因と対策を迅速に提示するもので、過去にディスクリート産業の試験運用において実績を持っていますが、プロセス産業に特化した適用は日立にとって初めてとなります。
高温・高圧の環境での検証
本共同検証では、高温や高圧、有害物質を取り扱う場面を想定し、AIエージェントがどれほど高い精度で故障原因の特定ができるかを確かめます。具体的には、三菱ケミカルが保持するP&IDや設備図面といったデータをもとに、日立の独自技術で知識を整理(ナレッジグラフ化)し、生成AIがこれらの情報を活用することで高精度の故障診断を実現するとしています。
業務の高効率化を目指す
日立はさらに、「HMAX Industry」を他の成長産業に展開し、製造現場の自動化・自律化を進める「Integrated Industry Automation」も推進します。これにより、労働力不足の問題や生産性向上、品質改善といった産業界が抱える課題に貢献することを目指します。特に、フロントラインワーカーの生産性向上を支援する取り組みです。
データの融合による知識の共有
AIエージェントの開発のためには、現場のデータや記録、設備に関する資料を統合して分析します。熟練技術者の思考プロセスを実現するために、様々なデータを関連付けて読み解く能力が重要です。具体的なデータには、過去の検査履歴や運転状態データ、さらには現場からの画像データなどが含まれます。これによって、品質の確保や技術の伝承が進みます。
将来の展望
本共同検証が成功裏に進んだ後には、三菱ケミカルの国内外の生産拠点へこの技術を広め、運転や安全管理などの重要業務を最適化するための特化型AIエージェントの開発が検討されます。また、複数のAIエージェントが連携して働くシステムの開発も進められ、より高度な業務支援が期待されることでしょう。
日立製作所と三菱ケミカルの協力は、今後の化学プラントの運営における新しい可能性を開いていくことでしょう。AIの力を活用することにより、これまで以上に効率的で安全なプラント運営を実現することが目指されています。