熊本県菊陽町が進める災害対策DX化の実践とその効果
2024年3月、熊本県菊陽町で行われた大規模地震を想定した災害図上訓練は、アナログな情報処理からデジタル化の重要性を浮き彫りにしました。従来、災害対策業務は主に「紙とペン」に依存していましたが、これは多くの問題を引き起こすことが明らかにされています。
従来の課題
災害時、役場の災害対策本部には大量の情報が集まり、自治体によってはメモ用紙に情報を書き留めることで対応しています。しかし、このアナログ方式には情報の記載精度が担当者によって異なるという課題が存在し、緊急時における情報の混乱を招きやすいのです。その結果、災害対応において必須の情報が抜け落ちる危険が高まります。
菊陽町は、過去の災害経験を踏まえ、こうした問題の解決に取り組むため、訓練を実施しました。この訓練ではアナログ方式とデジタル方式を同時に実施し、情報処理の正確さや速度を数値化する試みが行われました。
訓練内容の深掘り
訓練の中で、約20分間において40件以上の被災・避難情報が役場に集中する状況を再現し、「情報収集担当者」「報告担当者」「意思決定者」という役割に分けて対策の流れを作り出しました。アナログ方式では情報の抜け漏れが約3割という結果が記録され、さらに報告時刻や記録担当者が抜け落ちる事例もありました。中には、重要な情報の誤記や誤解も確認され、迅速で正確な対応が難しい実態が浮き彫りになっています。
一方、デジタル方式ではパソコンやタブレットを利用し、情報は即時に時系列で整頓されるため、抜け漏れがゼロに近づく結果となりました。また、処理時間が従来より最大20%短縮され、参加者からはデジタル方式の利便性を賞賛する声が寄せられています。
参加者の意識の変化
訓練に参加した職員からは「デジタル方式では情報が瞬時に共有でき、全体像が把握しやすくなる」といった感想が多く、自身が実務を担えるという信念が高まったことがアンケート調査でも確認されました。特に、災害時の情報処理体制についての理解度が訓練前の2.15から訓練後には4.53へと大幅に上昇したことは、参加者の自信向上を示す重要な指標です。
今後の展望と全国展開
株式会社減災ソリューションズは、菊陽町で得た成果を基に、全国の自治体や関連機関にこのDX導入の効果を発信していく方針を示しています。災害に迅速に対応できる体制を確立することは、これからの日本において不可欠な課題です。この取り組みは、災害時の混乱を防ぐ新たなモデルとなることが期待されています。
最後に、菊陽町は、訓練の評価データを今後公式ウェブサイトで公開する予定です。この情報は全国の防災担当者にとって非常に価値のある資料となるでしょう。