はじめに
2023年は「人的資本経営の情報開示元年」となり、多くの企業が人的資本の重要性を認識しました。2024年には、さらなる開示が進行中です。本レポートでは、約4000社の上場企業に対して、AI(ChatGPT)とコンサルタントによる評価を行い、人的資本情報の開示の現状を探ります。
現状の人的資本開示
今回の調査から、企業の人的資本開示にはいくつかの課題が浮き彫りになりました。まず、約半数の企業が法定開示事項に留まっており、具体的な施策の提示が不足しています。このため、投資家は企業の取り組みを十分に理解できていないのが現状です。特に、「ただ〇〇を行っている」といった抽象的な説明では、実際の取り組みが見えにくく、信頼性も薄れてしまいます。
その一方で、業界ごとの開示水準には顕著なばらつきが見られます。金融業や電気・ガス業界では多くの高得点企業が見受けられますが、海運業やサービス業では低い企業が多く存在しています。この差異は、業界の特性や競争環境、人的資本開示の意識の違いによるものと考えられます。
評価基準とスコア
我々は以下の5つの基準に基づいて、企業の人的資本開示を評価しました。これらの基準を基に企業を100点換算でスコアリングし、企業の取り組みの成熟度を明確化しています。
1.
人的資本KPIの網羅性
2.
KPIの年度カバー
3.
取り組みの具体性
4.
戦略との連動性
5.
独自性
これらの基準に全球的に一貫した取り組みを示す企業は、特に投資家にとって信頼を寄せられる存在になるでしょう。
未来の人的資本開示
AIと人間が一致して高評価を与える企業に共通する要素として、
具体性、
戦略との連動性、
独自性の3点が挙げられます。これらを重視した開示は、投資家が企業の経営戦略や姿勢を理解する手助けとなります。特にデジタル化が進む現代において、情報量の膨大な有価証券報告書は、AIによる効率的な分析と評価が不可欠です。
今後には以下のポイントが重要視されるでしょう:
- - 具体性の徹底: 投資家に取り組みの実態を伝えるための詳細な説明。
- - 戦略との連動性の明確化: 企業全体の成長戦略に対する貢献度の示し方。
- - 独自性の強調: 他社との差別化を見せる独自のKPIや施策の設定。
まとめ
人的資本開示は今後、企業の信頼性向上に寄与する重要な要素となります。AIにより情報開示の精度が上がれば、企業とステークホルダー間のコミュニケーションも深まるでしょう。以上の取り組みを通じて、企業は未来の成長に繋がる人的資本の価値をより広く浸透させることが期待されます。
今後もこのテーマに継続して取り組んでいく予定です。