群馬県大泉町が描く、住民起点の行政改革と多文化共生の未来

群馬県南東部に位置する大泉町は、企業の集積や多文化共生という二つの顔を持つ町です。この町のリーダーとして、村山俊明町長は12年間にわたり、住民の声を大切にする行政経営を実践しています。元館林市長の須藤和臣氏が主催する研究会からのインタビューを通じて、その活動や背景を探ります。

経済の安定と住民の声に応える取り組み

村山町長は、町長に就任した際に最初に取り組んだのが経済の安定でした。彼は、当時の町にとって、工場の海外移転の懸念や雇用の創出、税収の安定化が急務であると感じました。これを実現するために、企業の誘致に尽力し、安定した経済基盤を築くことが全ての住民サービスの礎になると信じているのです。

現在、特に町民からの声で重要視されているのは、物価の高騰への不安です。この声に応えるため、町は全小中学校での給食費を無償化する施策を打ち出しました。経済全体を見渡すマクロな視点と、個々の住民の悩みに耳を傾けるミクロな視点、両者をバランスよく回すことが町長の役割だと語ります。

独自の企業連携で未来を見据える

村山町長は、人口減少問題に直面している大泉町の未来について次のように言います。「企業の拡張を支え、得た利益を住民サービスに還元する好循環を持続させる。」新たな住民の流入や、ベンチャー企業の誘致を進める考えも示しています。特に、町の「企業情報交換会」は注目されており、町が主催するこの場では、社長や執行役員に限定された交流が行われ、具体的なビジネスチャンスが生まれる場となっています。

多文化共生の象徴：英語教育の充実

大泉町は、人口の約2割が外国籍住民という多文化共生の町でもあります。この特性を生かし、英語教育を他の自治体に先駆けて充実させてきました。村山町長は「多文化共生や国際化は実践的に示すもの」と述べ、独自に採用した日本人英語指導員を通じて、子どもたちが早期から英語に親しむ環境を整えています。英検の受験料補助なども行い、国際社会で活躍できる人材育成に力を入れています。

共生の道のりと地域の未来を築く対話

もちろん、多文化共生の道のりは簡単ではありません。外国籍住民への支援が一部から批判されることもある中、町長は公平な行政サービスを全住民に提供することが重要だと信じています。地域の人々が共に活動し、信頼関係を築くために日々対話を重ねています。

新庁舎の開設を控えた現在、町長は「住民サービスのデジタル化をスムーズに進めること」が重要だと考えています。これからも多様な背景を持つ人々が共に暮らせる町を作るため、村山町長は現場に足を運び、住民の声を大切にした施策を進めていくことでしょう。

大泉町の取り組みは、今後の自治体経営の一つのモデルとして、多くの自治体にとって参考となるかもしれません。住民起点の行政経営の理念のもと、彼らがどのように共生社会を築いていくか、要注目です。