燃焼振動の科学的解明と抑制法の革新について
燃焼振動とは、燃焼器内部で発生する熱音響自励現象であり、これが原因で燃焼器に致命的な損傷が生じることがあります。この問題を克服するために、東京理科大学の後藤田浩教授と難波江佑介助教、そして2024年度修了予定の加藤健太氏は、京都大学の黒瀬良一教授と河合真穂博士課程1年と共同で研究を進めました。この研究の中心となるのは、噴霧燃焼振動が形成する乱流ネットワークの特性を利用し、その挙動を解明するとともに抑制方法を提案することです。
研究の背景と目指すべき課題
燃焼振動は、燃焼器内での圧力や流速の変動、さらには火炎からの発熱率の変動が相互に影響し合うことで引き起こされます。この現象は単なる物理的な問題ではなく、燃焼器の劣化を加速させ、最終的にはその破損につながるため、発生メカニズムの解明や進行の予測、抑制技術の開発が求められています。ただし、液体燃料を使用する噴霧燃焼では、燃料液滴の微粒化や蒸発といった複雑な現象が絡むため、気体燃焼の場合以上にその挙動は高度に複雑化します。
本研究では、特にスケールフリー性が見られる乱流ネットワークの構造を分析しました。スケールフリー性とは、ネットワーク内で特定のノードが多くの接続を持つ現象であり、この特性は燃焼における組織渦の形成・消失と密接に関係しています。研究者たちは、このスケールフリー性がどのようにして発生し、その後どのように消失するのかといったダイナミクスを詳細に調査しました。
実験結果の概要
研究では噴霧燃焼振動の挙動を解析し、乱流ネットワークの特性を図示すると共に、様々な実験を行いました。特に、特定の領域に障害物を配置して燃焼振動を抑制する試みがなされたのです。実験の結果、障害物の設置により燃焼室内での圧力振幅やパワースペクトル密度のピークが顕著に減少し、噴霧燃焼振動が効果的に抑制されることが確認されました。
主要な研究成果
1. 噴霧燃焼振動の乱流ネットワークにおいてスケールフリー性が見られることを確認。
2. 乱流ネットワーク内に形成されるハブを特定し、その周辺での組織渦構造が振動の大きさに及ぼす影響を解析。
3. コネクターコミュニティの特徴から、特定の領域に障害物を設置することにより、噴霧燃焼振動を効果的に抑制できることを実証。
これらの研究成果は、2025年7月2日にアメリカ物理学会の学術誌『Physical Review Applied』において発表され、燃焼振動に関する新たな理論の構築に寄与します。
今後の展望
本研究で得られた知見は、燃焼技術のさらなる発展に寄与することが期待されます。特に、産業界においては、燃焼器の設計や運用の改善に向けた指針を提供し、エネルギー効率の向上や、安全性の強化に貢献することが期待されています。今後、さらに多くのデータ収集や実験が必要ですが、本研究はその第一歩となるものといえるでしょう。