海外AI事情から見えた、日本企業の課題
近年、AIの導入は多くの企業で進んでいます。しかし、導入率が78%に対し、実際に成功を収めている企業はわずか5%といいます。このような中、株式会社Helpfeelは、企業向けのAIナレッジデータプラットフォームを展開し、私たちに示唆を与えています。
 成功率わずか5%の現実
Helpfeelが主催した勉強会では、AI導入のトレンドとその実態について語られました。AIが無料で利用できる環境が整ったにもかかわらず、多くの企業が「何のためにAIを導入したのか」という根本的な問いに答えられていない実態が浮き彫りになりました。企業は導入したという事実に満足し、本来の業務改善や顧客体験の向上に結びついていないのが現実です。
実際、Helpfeelの代表、洛西一周氏は「AIを導入しただけではもはや成果が得られない時代に突入した」と指摘します。導入した技術を運用し、そこから得た情報をもとに行動を改善する「運用支援」が不可欠だと言います。
 海外AI事情の分析
諸外国、特にアメリカでは2023年のAI導入率が55%から2024年には78%と急上昇しています。日本のカスタマーサービスにおける導入率32%と比較すると、この差は明らかです。成果を上げられない理由として、企業が「AIは導入したから後は任せる」というスタンスを取ってしまっていることが考えられます。
Helpfeelが紹介した事例の中には、700人のオペレーターをAIが置き換えたものの、顧客満足度が低下し、結局は人による対応に戻した企業もありました。このような失敗から学ぶべきは、AIの導入は「人を減らすこと」ではなく、「人の力を高めること」にあるのです。成功している企業では、AIが人間の判断を補完し、効率と品質を両立させています。
 新たな人材像と企業の役割
AIの進化により、カスタマーサポート職の役割も変わりつつあります。単に顧客の感情に寄り添うのではなく、APIやSQLを理解し、業務を自動化する能力が求められています。人とAIが共存する時代では、AIを適切に運用し、実績を出せる人材が重要です。
また、AIベンダーも変化を求められています。企業単体での導入ではなく、運用支援やコンサルティングを行う「伴走型モデル」への移行が進んでいます。North Americaの企業と交流したHelpfeelは、この点で高く評価される事例もあります。
 成功するための3つの条件
Helpfeelが見出した成功する企業の共通点は以下の3つです:
1. 
現地理解:多様な国籍の人材を持つことで、文化や習慣に即した意思決定を実現。
2. 
引き算思想:誰にでも使いやすい最小限の機能を重視し、闇雲な機能追加は避ける。
3. 
プロダクトベース:競争力の源泉として技術を活用し、汎用性の高い製品を軸に改善を重ねる。
これらの観点から、AIを成功に導くためには市場のニーズを捉え、スピーディーに製品を改善していくことが求められます。
 Helpfeelの取り組み
勉強会の最後にHelpfeelは、AI-FAQの自動翻訳機能を紹介しました。技術の進化により、日本語のFAQコンテンツをリアルタイムで50以上の言語に翻訳するツールが実装されています。これにより、外国人従業員や訪日観光客への情報提供が容易になります。さらに、Helpfeelは北米市場をターゲットにしたグローバル展開を加速しています。
Helpfeelの「AIナレッジデータプラットフォーム」は、企業が持つ知識資産をより効果的に活用するために、今後も革新を続けていくことでしょう。
企業がAIを導入する際には、導入そのものではなく、実際に活用される仕組みを整えることの重要性を忘れてはいけません。また、適切な人材の育成と共に、持続的な運用改善を進めることが成功の鍵となります。
 
 
 
 
 
