石塚元太良の作品展「BAUをめぐる冒険」の魅力
2025年10月2日から14日まで、カッシーナ・イクスシー青山本店で写真家の石塚元太良(いしづか・げんたろう)氏による作品展「BAUをめぐる冒険」が開催されます。この展示は、建築写真を通じて空間や時間の新たな視点を提供する貴重な機会です。石塚氏は、現代の写真表現を広げる取り組みに情熱を注いでおり、名作建築を捉えた約10点の作品を発表します。
展示のタイトルである「BAU」は、ドイツ語で「建築」や「構造」を意味します。この言葉を手掛かりに、石塚氏は世界中のモダン建築を探求し、その中でも特にラ・トゥーレット修道院との出会いから生まれた作品《Ondulatoire》が鍵となります。この作品では、「音楽としての建築」という視点から、建築に内在する時間性や光と影が巧みに表現されています。
本展は石塚氏の探究をさらに深化させるもので、新たなモチーフを見つける旅でもあります。彼のフィルムカメラによる作品は、単純なドキュメントに留まらず、建築の「質感」や「記憶」を写し取る深い視点が感じられます。特に、建築そのものがまるで語りかけてくるような、精密な構図と光の扱い方が印象的です。
展示される作品には、近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトやル・コルビュジエの建築物が含まれています。これに加え、石塚氏がライフワークとして定期的に撮影しているアラスカの氷河の写真も紹介されます。SNS時代において、石塚氏は photographing (撮影) の持つ「空間性」や「物質性」を再定義する試みに挑戦しています。
また、展示スペースには、カッシーナによるル・コルビュジエやシャルロット・ぺリアンの限定復刻版も置かれ、建築と家具、さらには写真表現が豊かに対話をします。この展示を通じて、石塚氏の作品と共に、モダニズムの美しさとその背景にある思想に触れることができます。
石塚元太良のプロフィール
石塚元太良氏は1977年に東京で生まれ、2004年には日本写真家協会賞の新人賞を受賞しました。彼の初期の作品はドキュメンタリーとアートの境界を行き来するものであり、特に写真集『PIPELINE ICELAND/ALASKA』で2014年度東川写真新人作家賞を受賞しました。2016年にはSteidl Book Award Japanのグランプリを受賞し、この年に出た『GOLD RUSH ALASKA』はドイツのSteidl社から出版されます。近年は、SNSの登場によって増える映像に対抗する形で、写真表現の新しい可能性を探ることに注力しています。
展示情報
- - 日時: 2025年10月2日(木)~10月14日(火)
- - 場所: カッシーナ・イクスシー青山本店
- - 作品予定: ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトなどの近代建築
ぜひこの機会に、石塚元太良の視点で描かれた名作建築の魅力に触れてみてください。現代の写真アートが持つ多様性や奥深さを実感できることでしょう。