iPS細胞と再生医療
2025-09-05 00:18:30

再生医療の未来を切り開く!iPS細胞の目的外細胞を見分ける新技術

新しい技術が再生医療を変える



近年、再生医療の進展が期待される中、iPS細胞の利用に注目が集まっています。国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究チームは、iPS細胞から分化した神経細胞内に潜む目的外細胞を識別するための新しい糖鎖マーカーの開発を成功させました。この技術は、再生医療の品質管理や分離技術の高度化に大きな貢献を果たすと期待されています。

iPS細胞と目的外細胞の関係



iPS細胞は、体細胞から誘導され、多様な細胞に分化可能な特性を持つ細胞です。これにより、再生医療では、病気や怪我により失われた細胞を補う治療法の開発が期待されています。しかし、iPS細胞から得られた細胞群には、意図しない目的外細胞も混在しているため、目的とする細胞の品質と安全性が保障されなければなりません。

目的外細胞は、治療効果に悪影響を及ぼす可能性があるため、これを取り除くことが非常に重要です。そのために、研究チームは新しいマーカーの開発に取り組みました。目的外細胞を取り除くためのマーカーは、細胞の種類や状態を識別する上で非常に効果的です。

scGR-seq法の活用



今回の研究では、産総研が過去に開発した単一細胞糖鎖・RNAシーケンス法(scGR-seq法)を用いてiPS細胞由来の神経細胞を解析しました。この手法により、1つの細胞ごとに糖鎖と遺伝子の発現情報を同時に取得することが可能となります。その結果、神経細胞集団に含まれる目的外細胞を標識可能な糖鎖マーカーを特定できました。

scGR-seq法を用いることで、研究者は4つの細胞亜集団を同定しました。それぞれの亜集団は、成熟神経細胞、未成熟神経細胞、未分化神経前駆細胞、そして間葉系細胞として確認されました。この分析によって、目的外細胞の特定が進みました。

目的外細胞の標識技術



研究チームは、糖鎖に結合するタンパク質であるレクチンを利用して、各細胞の糖鎖発現情報を測定しました。具体的には、特定の糖鎖に対して結合する蛍光標識した抗体を細胞群に反応させ、確認作業を行いました。この結果、未分化神経前駆細胞と間葉系細胞に特有の糖鎖マーカーが確認されました。

このような新しい技術によって、iPS細胞から分化した細胞における目的外細胞の同定と追跡が可能となりました。そして、これらの発見は再生医療における細胞の安全性と有効性を高めるための新しい道を開くことが期待されています。

今後の展望



この技術は、iPS細胞由来の神経細胞だけでなく、他のさまざまな再生医療用の細胞にも適用される可能性があります。これにより、より安全で高品質な細胞製品の開発を目指し、細胞の品質管理や評価手法の進化を進めていく予定です。さらに、治療効果を最大限に引き出すための細胞培養技術の確立にも繋がることでしょう。

論文情報



本研究に関する詳細な内容は、2025年9月4日に専門誌「Stem Cell Reports」で刊行される予定です。これにより、再生医療におけるiPS細胞の利用の可能性がさらに広がることが期待されています。


詳しい情報については、産総研のウェブサイトをご覧ください。 産総研プレスリリース


画像1

画像2

画像3

画像4

画像5

関連リンク

サードペディア百科事典: 再生医療 iPS細胞 糖鎖マーカー

トピックス(その他)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。