オゾンとイソパラフィンによる革新的な害虫防除技術
国立研究開発法人 産業技術総合研究所と株式会社E・テックが共同で行った研究により、オゾンを混和したイソパラフィンが、害虫防除において高い効果を発揮することが明らかになりました。この新しい技術は、害虫を窒息させる効果を持つイソパラフィンの即効性を向上させ、環境に優しいアプローチとして注目されています。
研究の背景
化学的殺虫剤は高い効果を持つ一方で、環境への負荷や害虫の抵抗性の問題があります。特に、農業分野では2050年までに化学的殺虫剤の使用を50%削減する目標が設定されています。このため、より環境に優しい物理的殺虫剤の開発が急務です。
物理的殺虫剤は昆虫の呼吸器官である気門を物理的にふさぎ、窒息させることで効果を発揮しますが、即効性が低いため使用が限定されています。そこで、イソパラフィンにオゾンを加えることで、その効果をより高めることが期待されました。
研究結果
研究者たちは、イソパラフィンとオゾンの混合物が害虫に対して持つ殺虫効果を評価しました。特に、クロゴキブリやシロアリ、ヤマトシロアリなどに対して窒息させる際の効果が大幅に向上したことを確認しました。試験結果によると、イソパラフィンにオゾンを加えることで、殺虫効果が高まり、窒息までの時間も短縮されることが明らかになりました。
この研究では、コントロール剤と比べてオゾンを添加した効果的な防除剤が使用され、実際にシロアリの死亡率が60%から100%に増加したことが示されています。特にゴキブリや蚊では、死亡までの時間が従来の10分以上からわずか2分に短縮されたことが印象的です。
メカニズムの解明
気門を対象とした電子顕微鏡観察により、オゾンがイソパラフィンに影響を与え、気門周辺での被覆が増加したことが確認されました。この結果、オゾンが加わることで、イソパラフィンの粘性が向上し、気門をより効果的に封鎖することが可能になったと考えられています。
今後の展望
この新たな技術は、衛生害虫や農業害虫の防除において持続可能で安全性の高い選択肢となることが期待されます。また、将来的には虫害対策だけでなく、貯蔵された穀物などの防除にも幅広く応用される可能性があります。
この研究の詳細は、2025年10月28日に「Scientific Reports」に掲載される予定です。環境負荷を低減しつつ、効果的な害虫防除が行える新技術が、今後の農業や衛生管理に与える影響に大いに期待が寄せられています。