医師・看護師の働き方改革から見える医療現場の課題と展望

2024年4月に施行された「医師の働き方改革」は、医療現場における労働環境の改善を図るための重要な取り組みです。しかし、施行から1年が経過した現在、その成果については依然として厳しい現実が浮き彫りとなっています。Ubie株式会社による意識調査の結果、約6割の医師が労働時間短縮へ実感を持てていないことが明らかになりました。

調査の背景と目的

本調査は、医療業界における働き方改善の実態を把握するために行われました。医師だけでなく、看護師も対象に加えられ、広範な視点から医療現場の課題を掘り下げることが目的です。データをもとにした分析は、働き方改革の真の効果を明らかにし、今後の政策提言につなげる意義を持っています。

調査結果の概観

調査結果によれば、医師の39.7%が労働時間が短縮されたと感じている一方、60.3%は「短縮されていない」または「増加した」と回答しています。これは、改善の兆しがあるものの、依然として多くの医師が改革の効果を実感できていないことを示しており、労働環境における根本的な問題が解決されていないことを意味します。また、看護師においては77.7%が労働時間の短縮を実感できていないという厳しい現実も明らかになりました。

隠れ残業の増加

興味深いことに、「隠れ残業」をしている職員が増加しているとの回答も多く見られました。医師の58.7%、看護師の62.4%がこの現象を実感しているとのことで、労働時間管理がルーチン化している中で、表沙汰にならない労働の実態が存在することを物語っています。

労働時間短縮を阻む要因

医師は「業務量過多」と「人員不足」を労働時間短縮が進まない理由として挙げており、看護師も同様のウィークポイントを報告しています。業務負担が大きく、新しい施策を実行する余裕がないことが共通する問題として浮かび上がりました。効率化が求められる業務の中には、医師が参加する「会議や研修」や看護師が担当する「患者の入退院手続き」などが含まれており、これらを見直す必要性があるでしょう。

DX推進の遅れ

医療現場におけるDX（デジタルトランスフォーメーション）の推進状況も、不十分との回答が目立ちます。医師の70.3%、看護師の79.4%がDXが全く実施されていないか、あまり実施されていないと感じており、業界全体でのデジタル化が課題となっています。しかし一方で、DX推進が職場選びの重要基準だと考える医師は67.5%、看護師は57.7%に上ることから、デジタル化への期待も高まっていることが伺えます。

AI技術への期待と活用状況

さらに、医師の65.1%、看護師の45.3%がAI技術による業務効率化に期待を寄せています。特に医師の間では、診療記録の自動生成や書類作成の時間短縮などが期待され、看護師ではデータ入力や記録業務の効率化が焦点となっています。また、生成AIの活用予定者が半年で倍増したことからも、AI技術が今後の医療現場でのキーポイントとなることが明らかです。

おわりに

Ubieの共同代表取締役である阿部氏は、調査結果を通じて医療現場における働き方改革の課題が明確になったと述べています。医師や看護師が抱える労働環境の改善には、継続的な取り組みが求められています。特に、業務の効率化や人員確保、デジタル技術の活用は今後の医療業界にとって不可欠な要素となるでしょう。医療の質を向上させるためには、これらの課題に対する取り組みを加速する必要があります。