国内証券業界初のトークン決済実証への挑戦
日本の金融界で新たな試みが始まっており、国内初のトークン化預金を利用したセキュリティトークン(ST)の決済システムの実証プロジェクトが発表されました。これは、株式会社SBI証券、大和証券、SBI新生銀行、BOOSTRY、大阪デジタルエクスチェンジ株式会社、ディーカレットDCPの6社が連携して進めています。このプロジェクトは、セキュリティトークンの二次流通市場の発展を目的としており、2025年8月に実報告書をもとにDCJPYを使用したSTのDVP決済を実施する予定です。
プロジェクト背景
近年、多くの企業がデジタル通貨やトークン化した資産の活用を進めており、その中でもセキュリティトークン市場は特に注目されています。2020年の国内初デジタル債の発行以降、市場は急速に成長し、2025年には公募発行総額が2,700億円に達する見込みです。しかしながら、証券決済においては依然として銀行振込が主流であり、決済リスクや事務負担の軽減が求められています。このプロジェクトは、その解決策として新しいDVP決済方式の導入に取り組むものです。
実証スコープ
プロジェクトの核心は、トークン化預金DCJPYを利用したDVP決済の実証です。BOOSTRYが開発するブロックチェーンプラットフォーム「ibet for Fin」を使用し、SBI新生銀行が発行するDCJPYとIT技術を組み合わせて、セキュリティトークンの売買決済フローを検証します。具体的な業務フローは、売方証券会社でのST仮移転から始まり、決済情報のやり取りを経て、最終的に ST が本移転する流れです。これにより、従来の決済方式に比べ迅速かつ安全に取引が行われることが期待されています。
トークン化預金DCJPYの特徴
トークン化預金DCJPYは、銀行預金をデジタル通貨としてトークン化したもので、分散型台帳技術によって管理されています。この仕組みにより、決済業務のプログラマビリティが向上し、リスクの低減や業務フローの効率化が実現可能になります。具体的には、決済と同時に証券の移転を行うことができ、これにより流動性の高い取引が促進されることが見込まれます。
現在の進捗と次のステップ
2025年8月には関係者が集まり、実証データを元にした結合型受験が実施され、STとDCJPYとのDVP決済が検証されました。この段階での確認を経て、今後は実発行を目指す方向でさらなる検討が行われます。新たな決済方式をST市場全体に周知し、より広範に利用される成熟したシステムに育て上げるための活動が続けられるでしょう。
今後の展望
このプロジェクトはST市場の健全な発展を促進するための重要なステップと位置付けられています。実証結果が広く流通した後は、参加証券会社やSTプラットフォームと連携し、共通の決済基盤としての実現を目指す方向性が示されています。これにより、決済リスクの低減と市場の効率性向上を図り、持続可能な証券取引市場の形成に寄与することが期待されています。 それによって、デジタル金融がさらに進展していく道筋が目の前に開かれます。