2025年上半期の不動産投資市場レポート
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)が発表した2025年上半期のインベストメント市況レポートでは、日本における不動産投資市場が引き続き良好な資金調達環境を維持していることが示されています。過去の取引データに基づき、賃貸収入の増加がオフィス物件の取引にポジティブな影響を与えたことが報告されています。
マクロ経済環境の現状
2025年の日本の実質GDP成長率は前年比約0.8%の見込みである一方で、世界経済には減速の懸念が漂っています。特に、米国の輸入関税政策が製造業の業績悪化をもたらしており、国際的な経済動向が日本市場にも影響を及ぼしています。しかし、日本銀行は政策金利を引き上げる際に慎重な姿勢を崩しておらず、最近では金利の上昇ペースが鈍化しています。
このような中で、金利上昇が続く環境でも不動産投資市場は活況であり、事業用不動産の賃貸収入が向上していることから、東証REIT指数は2024年12月の底を経て10%以上改善しています。さらに、不動産業向け貸出金がGDPに対して緩やかに増加していることも資金調達環境が良好であることを示しています。
オフィス取引の動向
最新のデータによると、2025年の投資用不動産の売買取引高は約8.8兆円であり、前年同期よりは12.4%減少しています。しかし、これは直近5年の平均を上回る結果であり、特に都心の高グレードオフィス物件においては賃貸収入が増加したため取引額が17%上昇しました。
対照的に、店舗の取引は44%減、賃貸住宅が25%減、物流施設が21%減とそれぞれ減少しています。これらの数値は前年同時期の大規模なポートフォリオ取引の影響を受けていると考えられます。興味深いことに、2025年に入ってからは海外投資家が日本市場に対して強い関心を示しており、特に「東急プラザ銀座」のような大規模な取得事例が報告されています。
先行きの展望
世界経済における不透明さは依然として残りますが、海外からの日本への不動産投資需要は引き続き堅調であると予想されます。また、日銀の金利引き上げのペースが鈍いことから、金利差が大きく縮まらず円安が続く見込みです。こうした経済状況の中、国内機関投資家によるファンド設立が増加しており、資金環境は良好であるとの評価がなされています。
一方で、一般の国内事業会社からのオフバランス目的の潜在的な不動産売却ニーズも顕在化しており、これらが今後の不動産取引総額に影響を与えると予想されています。今後の市場動向については引き続き注視が必要です。
このように、不動産市場は多くの変化を迎えていますが、資金調達環境の良さとオフィス取引の活性化は、今後の成長を支える要因となるでしょう。さらに、海外投資家の動向や国内企業の戦略も今後の市場に影響を与える重要な要素として注目されます。