次代の畜産業を変える「AIビーフ技術」
近畿大学生物理工学部の松本和也教授が開発した「AIビーフ技術」は、肉用牛の肥育過程をデータで可視化し、次世代の畜産業を牽引する新技術です。この技術を基に、2024年12月に設立される株式会社ビーフソムリエが、肉用牛の枝肉形質を事前に予測できるサービスを提供します。
「AIビーフ技術」とは?
「AIビーフ技術」は、数十年にわたる研究によって生み出されたもので、わずかな量の血液サンプルから135種類のタンパク質を分析し、出荷までの肥育状況や肉質を予測します。これにより、牛の肥育中に肉質改善が行えるため、生産者にとっては非常に価値の高いアプローチです。
この技術は、肉質の改善だけでなく、肥料コストの削減や生産効率の向上にも寄与します。特に日本が抱える養殖飼料の高い海外依存問題を解決する手助けが期待されています。
肥育業界へのインパクト
現在、肉用牛の生産コストは上昇傾向にあり、経営の安定を脅かしています。個体差による成長のばらつきも問題であり、同じ資源であっても得られる利益が異なるため、経営的な不安が増しています。ここで「AIビーフ技術」が重要な役割を果たすことで、将来的な肥育状況を早期に把握でき、効率的な牛群管理が可能になります。
ビーフソムリエは、この技術を使って、生産者や飼料会社、獣医師に対してもさまざまな情報を提供。例えば、他のブランド牛との違いをデータで示すことができ、品評会等への出品にも活用されます。
企業概要とビジョン
株式会社ビーフソムリエは、東京都品川区に本社を構え、AIビーフ技術を活用した幅広いサービスを展開します。設立の背景には、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の支援を受けて事業化を目指す姿勢があり、松岡俊樹社長が代表を務めます。
技術の活用例としては、食肉卸業者の仕入れ予測、食品小売におけるブランドの創出、金融機関での融資モデルとしての活用が挙げられます。これによって、畜産業全体の効率化と生産性向上が期待されます。
たくさんの革新が生まれる未来
この「AIビーフ技術」に対する期待も高まり、投資家からの賛同も得て、畜産業界における新たな市場創出につながると考えられています。Abelia Capitalの仁木隆大氏は、この技術が畜産の未来を変えるポテンシャルを秘めていると強調しています。特に、肉用牛の肥育過程が可視化されることで、買い手と売り手の取引方法が大きく変わる可能性があります。
近畿大学とビーフソムリエが連携し、畜産業に革新をもたらす「AIビーフ技術」は、食肉の未来をより良くしていくための大きな一歩であるといえるでしょう。これからの動きに注目です。