看護師不足が深刻化する中での働き方改革と採用戦略の実態

はじめに

看護師の不足が深刻な問題となっている現代において、株式会社エス・エム・エスは、全国の医療機関や介護施設を対象に「看護師の働き方に関する意識調査」を実施しました。この調査は542名の人事担当者からの回答を基にしており、看護師の採用と定着をテーマにしています。以下では、調査結果を詳しく分析し、看護師不足の現状とそれに対する取り組みを見ていきます。

看護師不足の現状

実に78.4％の事業者が看護師の不足を実感しており、特に訪問看護ステーションと病院でその傾向が強まっています。これは在宅医療への需要の高まりにも関わらず、必要な人材が適切に配置されていないことを示唆しています。具体的には、看護助手や介護助手が必要であるにもかかわらず、その配置ができていない事例が17.9％に達していることからも、現場の逼迫した状況が伺えます。

超過勤務時間の実態

看護師の超過勤務時間は平均して1時間以上5時間未満の範囲が最も多く、特に病院においてその傾向が顕著です。訪問看護ステーションでは事業者によってばらつきがあるものの、看護師の過重労働が問題視されています。この状況を解決するためには、より多くの看護師を採用し、業務の負担を軽減する必要があります。

賃上げの実施状況

調査によると、2024年度に賃上げを実施したと答えた事業者は67.2％に達しました。賃上げの割合としては、1%以上1.5％未満が最多となっており、これは診療報酬や介護報酬の改定の影響を受けていると考えられます。しかし、売り上げへの影響は「変わらない」または「マイナス」と感じる事業者が多く、依然として安定した経営は難しい状況にあります。

採用活動の取り組み

看護師の採用に際しては、応募条件の緩和や労働条件の見直しが進められています。具体的には、多くの事業者が応募条件を明確化し、求職者に対してより応募しやすい環境を整えています。しかし、採用活動にかかるコストの増加や十分な時間を確保できないといった問題も浮上しています。求人票の作成に苦戦している事業者も多く、自法人の特性を上手くアピールできていない状況です。

退職者数の増加と理由

看護師の退職者数は増加傾向にあり、健康上の理由や人間関係に不満を抱えているという声が多数寄せられています。しかし、事業者から把握されている退職理由は「健康上の理由」が最も多く、実際の声との乖離が目立ちます。このことから、事業者と現場の看護師との認識のギャップを埋めるための対話が必要です。

働き方改革の実施状況

看護師の働き方改革に向けた取り組みは半数の事業者が実施しており、具体的には看護師の人数を増やす努力や有給休暇の取得促進、残業時間の削減などがあります。特に、内部のハラスメントについての相談窓口の設置が57.7％と人気ですが、看護師たちは外部の相談窓口を希望していることも興味深い事実です。

結論

看護業界が抱える問題は深刻ですが、事業者側での取り組みや改革を進めることで改善が期待されます。看護師の声を真摯に受け止め、彼らの希望を反映した職場環境の整備が急務です。今後は、看護師の定着促進と採用強化がより一層求められるでしょう。こうした努力を通じて、持続可能な医療提供体制を築いていくことが重要です。