旭化成と将来宇宙輸送システム株式会社が連携
日本の宇宙産業の発展を加速させるため、旭化成株式会社と将来宇宙輸送システム株式会社(ISC)が2022年12月に包括連携協定を結びました。この協定は、次世代宇宙輸送システムを実現するための新たなステップとなります。
1. 背景
近年、宇宙を活用したサービスの需要が急増しており、特に人工衛星を運ぶためのロケットに対する需要が高まっています。しかし、日本国内のロケット供給能力は十分とは言えず、特に民間の国産ロケットの開発が急務です。旭化成は、固体燃料を利用した推進システムの設計や技術に豊富な経験を持っています。この技術を宇宙輸送分野に展開し、2025年から事業やサービスの検討を始めることを決定しました。
一方のISCは、「毎日、人や貨物が届けられる世界。そんな当たり前を、宇宙でも。」というビジョンを掲げ、日本の宇宙往還の実現を目指すスタートアップです。2028年3月までに人工衛星を打ち上げるロケットの開発を目指しており、文部科学省のSBIRフェーズ3にも採択されています。
2. 提携の内容
この包括連携協定では、旭化成の技術と設備を利用してロケットエンジンの開発を行うことが主な目的です。旭化成は滋賀県高島市にある施設を使用し、ISCが開発する宇宙輸送システムに必要なロケットエンジンの試験と検討を行います。実際、2025年1月には初回の試験も実施されています。
さらに、両社はロケットエンジン開発に限らず、次世代宇宙輸送システムの実現に向けてさまざまな技術での協力も検討していく予定です。
3. 各社のコメント
旭化成の専務執行役員である山岸秀之氏は、「旭化成が長年培ってきた技術を宇宙輸送に活かし、新しい価値を創造したい」とコメントしました。そして、ISCとの協業を通じて、より信頼できる宇宙輸送ソリューションの開発を加速していく意向を示しました。
一方、ISCの代表である畑田康二郎氏は、2022年に設立したばかりの企業ながら、既に多数の企業や研究機関と連携しているとし、実績のある企業との協力が再使用型ロケットの早期実現に欠かせないと強調しました。彼は、パートナー企業との連携を通じて、新しい宇宙輸送技術を確立させていく決意を語りました。
4. 未来に向けて
この提携は、宇宙輸送分野における新しい地平を切り開く可能性を秘めています。旭化成が持つ技術とISCの革新的な発想が融合することで、より効率的で信頼性の高い宇宙輸送システムが実現されることが期待されています。日本の宇宙産業は今後、グローバルでも競争力を持つ重要な産業となるでしょう。両社の今後の動向にぜひ注目してください。