資金調達手段に関する経営者の意識調査
企業を運営する際には、人件費やオフィス賃料、光熱費、広告費用など多岐にわたる支出が伴います。しかし、経営状況が厳しい場合には、これらの費用を賄うことが難しくなり、資金ショートのリスクが高まります。最悪の場合、これが原因で倒産に至ることもあります。そのため、企業が健全な事業を継続するためには、適切なタイミングで自社に合った資金調達を行う必要があります。
日本の企業は、いかに資金を調達しているのか。今回は株式会社JPSが実施した「資金調達やファクタリングに関する認知・利用実態の調査」の結果を基に、経営者・役員100人がどのような資金調達手段を検討しているかを見ていきます。この情報が資金調達を検討している方々の参考になれば幸いです。
調査概要
- - 調査目的: 資金調達・ファクタリングに関する認知と利用実態を調査
- - 調査期間: 2025年9月11日
- - 調査方法: インターネット調査
- - 対象者: 全国の20歳以上の経営者・役員
- - 調査人数: 100名
資金調達方法の検討状況
最初の質問は、「検討したことのある資金調達方法は何か?」というものでした。その結果、最も多い回答は「銀行・信用金庫からの融資」で、約55%の経営者がこの方法を検討したことがあると報告しています。次に多かったのは「補助金・助成金」で、23%の方が考慮していました。
特に、銀行や信用金庫からの融資が主流であり、返済義務のない国や自治体からの支援が注目されているようです。しかし、クラウドファンディングやファクタリング、ビジネスローンに対してはそれぞれ10%程度の利用意向にとどまっており、これらの手段は広く浸透しているとは言えない状況です。
ファクタリングの認知度
次に「ファクタリングを知っているか?」という質問では、全体の約41%が「知っている」と回答。一方で59%の人々はその存在を認識していないことが明らかになりました。ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に売却することで、通常の支払期日より早く現金化できる資金調達手法です。これは融資とは異なり、金利が発生することはありませんが、売掛金の一部を手数料として支払う必要があります。
ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2つの取引形態があります。それぞれの手続きや手数料率が異なるため、企業は自社に最も適した方法を選択することが重要です。
ファクタリングの懸念
ファクタリングに関して懸念を持つ経営者は多いようです。「手数料が高い」というイメージを持つ人が41%で最も多く、「売掛先に知られる」ことや「業者選びの難しさ」についても懸念する声が挙がりました。特に手数料のついては融資に比べて高めになる傾向があると認識されているようです。
しかし、時間をかけずに現金を調達できる点は、急を要する場合には魅力的な特徴です。手数料を抑えるためには、信用力の高い顧客の売掛債権を選ぶ、短い支払期日を持つ債権を利用するなどの工夫が有効です。さらに、複数のファクタリング会社から見積もりを取ることで良い条件を交渉することもできるでしょう。
ファクタリングの利用経験
過去1年間でファクタリングを実際に利用したことがある人は約39%、逆に「ない」という人が60%強となりました。この結果から、ファクタリングをテーマにした情報収集が求められていることがわかります。多くの経営者が情報源として税理士や会計士を挙げ、ファクタリング会社の公式サイトや経営者同士のネットワークも活用されているようです。
ファクタリングの未来
一方で、ファクタリングの利用を今後考えているかとの問いには、積極的に利用したいという回答はわずか8%で、「できれば避けたい」との回答が37%に上りました。理由の一部には、資金調達自体の必要性を感じていないというものもあれば、内容がよく分からないからという声もありました。
ファクタリングは急速な資金調達が可能な手段ですが、特に経営不安を抱える企業には選択肢の一つとして考慮されるべきです。両者の特性を理解し、自社に合った資金調達手段を選ぶことが企業の健全な運営には不可欠でしょう。
結論
今回の調査結果から、依然として「銀行からの融資」が広く利用される一方で、新たな資金調達手法であるファクタリングの認知度や利用は十分ではなく、不安が存在することが確認されました。今後は、経営者が多様な資金調達の選択肢を正確に認識し、状況に応じた適切な手段を選択できる環境が必要です。これは企業の資金調達をより円滑に行なうための第一歩と言えるでしょう。