医療現場の新たな挑戦
三重県津市に位置する永井病院は、医療業界におけるデジタル改革、いわゆる「医療DX」を進めるためのプロジェクト「NAGAI 100」を開始しました。このプロジェクトの一環として、AIヘルプデスクであるHelpfeelを導入し、職員の定着率や業務効率化に寄与しています。
背景には厳しい医療現場の実情
日本全体で少子高齢化が進み、夏季の猛暑やコロナの影響もあり、救急搬送件数は増加の一途を辿っています。2024年には676万4,838件と過去最多の見込みです。このように医療現場が厳しい状況に置かれている中、三重県の永井病院も例外ではありません。約3,000件の年間受け入れに対し、500名を超える職員により管理されていますが、労務管理や問い合わせの対応には限られた人員で臨まざるを得ませんでした。特に、新人職員が抱える心理的不安は大きな課題です。
医療DXプロジェクト「NAGAI 100」始動
こうした課題を解決すべく、永井病院は医療DXプロジェクト「NAGAI 100」を立ち上げました。このプロジェクトでは、業務知識や制度情報をスマートフォンから迅速に検索できるAIヘルプデスクの導入を進め、職員が自己解決できる環境を整備しました。
AIヘルプデスクの導入直後から、職員は看護手順や感染症対応についての情報を簡単に検索し、参照できるようになりました。これにより、質問対応が減少し、新人社員の抱える「先輩に聞けない不安」を軽減しました。その結果、2024年度の離職率は前年比2.7%改善されました。また、人事部門の年間残業時間も約60時間削減されるという効果も得られています。
新たな取り組みで職員の意識が変化
Helpfeelの導入を通じて、職員の意識にも変化が生まれました。もともと不効率を諦めていた環境から「業務はもっと楽にできる」という意識が芽生え、自ら改善を考える文化へと変わりつつあります。このような意識の変革は、医療DXプロジェクト「NAGAI 100」にとっても重要な推進力となっています。
患者ケアの充実を目指して
永井病院は今後も、Helpfeelを活用した業務効率化により生まれた時間を「患者やその家族に寄り添う時間」として活用し、医療の質を向上させることを目指しています。星野康三院長は、「この成果は私たちの成功体験として、医療DXのひな形になると考えています」と語っています。
今後の永井病院の展望は、意識変革を経て、医療の本質である人と人とのコミュニケーションにより多くの時間を費やし、「最善の医療」を追求することです。AIの導入が進化を遂げる中、今後の取り組みにも期待が寄せられています。