中古マンションのリノベーションと快適性
実際に快適な住環境を確保するための取り組みとして、リノベる株式会社とSUUMOリサーチセンターが手を組み、実証実験を実施しました。この実験では、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準にリノベーションされた中古マンションにおいて、室内環境がどのように数値化されるのかを検証しています。
リノベる株式会社は、東京都 港区に本社を置く企業で、中古住宅の流通及び省エネ化を推進する役割を担っています。彼らが行った実証実験では、IoTセンサーを利用して、室内外の温熱や騒音を測定しました。この結果、特に注目すべきは2024年2月に行われた測定データです。このデータによると、外気温が3℃まで低下する中でも、室内の温度は16℃以上を保つことが確認されました。これは、暖房設備なしでも高い保温性能が発揮されていることを示しています。
実証実験の背景
日本では2050年にカーボンニュートラルを目指す政策が進められています。その中で、新築住宅の省エネ基準が厳しくなりつつありますが、既存の中古住宅においては約8割が現行の省エネ基準を満たしていないという現実があります。これを受けて、リノベるは積水化学と協力し、住宅の省エネ性能を向上させるリノベーションを提案しています。
長年にわたり、住宅選びにおいては間取りや駅からの距離などが重視されてきました。しかし、居住者の多くが暖かさや静かさといった実際の住環境に不満を抱えていることも事実です。リノベるは、こうしたニーズに応える形で、これまでに無かった側面を実験を通じて明らかにすることを目指しました。
実証実験の実施内容
実験の具体的な流れは以下の通りです:
1. 環境センサーを対象となる住戸に設置。
2. 室内外の温度や騒音データを遠隔から取得。
このデータをもとに、環境指標が算出され、住環境における快適性を確保するための基準が検討されています。結果的に、実験対象のマンションでは室内の騒音も良好な状態であり、外部からのノイズはほぼなく、居住者は快適に過ごせていることが確認されました。
実験の結果
室内の音環境を調査したところ、室内の平均騒音は34dB、最大でも40dBと静かな環境が保たれていることがわかりました。一方で、外部の環境基準は日中に11回、夜間に54回以上を超過する回数もあったものの、室内では基準を超えることは一度もありませんでした。これは、非常に優れた防音性能があることを示しています。
住まい選びの新しい基準
リノベるが実施した実証実験の結果、得られたデータは住まい選びにおいて新たな基準を提供する可能性を秘めています。住宅選びの際に、従来の条件に加えて、実際にどれほど快適に過ごせるかという評価が重要視されることが期待されます。
入居者からは「2月に入居したがエアコンを使用しなくとも、非常に快適だ」という声も聞かれています。さらに、光熱費についても年間で約93000円の削減効果が確認さ れています。これにより、居住者は経済的なメリットも享受できることになります。
今後に向けた展望
リノベるは、この実験結果を基に省エネリノベーションの普及を進め、カーボンニュートラル社会の実現に向けて邁進すると共に、消費者が自分に合った住まいを見つけるための手助けをすることに期待が寄せられています。既存ストックの住宅が持つ潜在的な価値を引き出しながら、新しい住環境の基準を提供することが、今後の課題となるでしょう。
リノベると積水化学の協業による「ZEH水準リノベーション」への取り組みは、これからの住宅の在り方を変えていく大きな一歩です。私たちの居住空間がより快適で持続可能なものに変わっていくことを期待しています。